続・学問のすすめ:実例

 書いたばかりの記事に、もう「続」です。金が手に入ると、時期を失い二度とは入手できない学歴が欲しくなるんでしょう。学歴は、金よりも大事なのでしょうね。教養、品位、信用を与えてくれるからでしょうか。


ショーン・マクアードル川上氏(47)に学歴詐称疑惑が浮上した。

・・・

 川上氏の公式ホームページ「SEAN K」の英文プロフィールには長年にわたり、下記の記述があった。

<高校卒業まで日本で教育を受け、大学で米国に戻り、フランスで2年間を過ごした。(中略)テンプル大学でBA(学位)、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得。パリ第1大学に留学をした>(編集部訳)

 川上氏は「週刊文春」の取材に対して、「学位は取っていない」「パンテオンソルボンヌ(パリ第1大学)には入っていない。オープンキャンパスの中で聴講した」「ハーバード・ビジネス・スクールには、オープンコースの3日くらいのコースに1回行った」などと回答。「ホームページは知らないうちに間違った文章が載っていた」などと釈明した。現在ホームページのプロフィールは削除されている。

」-- 週刊文春WEB

 

Yahoo!News

ショーンK氏 フジにも虚偽報告…学歴「そもそも公表してない」

スポニチアネックス 3月17日(木)5時36分配信

週刊文春」(16日発売)の報道を受け、川上氏が15日に過去に公式サイトの英文プロフィルに記載した学歴の詐称を認めた。スポニチ本紙の調べでは、14年12月時点ではこの学歴は削除されているが、現在見られないとはいえ、公式サイトに載せていたのに「自分では公表していない」というフジ側への説明はウソだったことになる。週刊文春によると高校時代のあだ名はホラッチョ川上氏の故郷・熊本ではホラ吹きという意味。今回の件もホラといわれても仕方ない状態だ。」

 

 過去には民主党議員の古賀氏もそうでした。こういう嘘つき体質の人間というのは最後まで往生際が悪いのです。

学歴詐称疑惑 

ペパーダイン大学卒業」としていた経歴が偽りではないかとの疑惑が浮上。経歴詐称は公職選挙法の定める虚偽事項の公表にあたる。当初は「弁護士を通じて卒業証書を受け取ったが、紛失し、弁護士の名前も忘れた」などと弁明をしたが、大学側が「古賀は卒業していない」と発表。

」-- wiki

 何といいますか、努力はしたくないが、良い恰好はしたいというわけです。最低の人間でしょう。

 

 電車に乗っていると吊り広告に大学の公開講座の広告がよくあります。大学のコマーシャルです。そんなものを聴いただけで「卒」なら楽なものです。下の写真はハーバードの生協で買ったネクタイです。これでMBA取得にしてもらえればありがたいことです。

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 これはハーバード大の正門前にあるハーバード大所有の研修所で行われたハーバード大出身者が作っているシンクタンクの一週間技術評価コースの資料ですが、修了証をもらって終わり。キャリアとしては何の足しにもなりません。面白かったですけどね。朝から晩まで次々と講師が出てきて聴いているだけです。

 

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ハーバード大のあるケンブリッジの隣町、大都市ボストンの市街

 

 このblogのアイコンに出てくるフランス人はパリ第四大学だったか、あの有名な所謂ソルボンヌ大学卒ですが、フランスの大学は別にエリート育成機構ではありません。社会的エリートは、グランゼコールから輩出されます。

 

 フランスの大学はバカロレアという日本でいえば、センター試験のような簡単な統一試験に受かればどの大学にでもいけます。そんなことをすれば、全員パリ大学に来てしまわないかと言ったら、来てもパリ大学では難しくて単位がとれず落ちこぼれるので適当に地方の大学に分散するのだそうです。

 

続・鳥なき里の村

 こんなハイブローなblogの読者には考えられない事と思いますが、Dr.Yは普通の社会と濃厚に関わったことがあり、「普通」の意味がよくわかっています。そうですねえ、クリームシチューのクイズ番組をみているとわかりますが「普通」の人は小学校低学年の知能;知識と能力しかありません。唯一、できる高等作業は九九だけです。それにしても九九もできない人だけはあまり見た事がありません。日本の教育で感心できる、唯一の業績でしょう。

 「今時の大学生の頭の程度」でも書きましたが、「普通の人」には代数は無理なので、数学一般は理解不能。「鶴、亀合せて10匹います。脚は合せて30本あります。鶴、亀はそれぞれ何匹いるでしょう」を連立方程式をたて、解ける人がどれだけいるでしょうか?日大出身の社会人の家庭教師をかつてやっていた友人が言いました、連立方程式を知らないんだ!!!中学生レベルですが、連立方程式を使わない方法なら小学校高学年の問題です。尤も、「ゆとり」世代は聞いたこともない問題でしょう。文科省も「普通の人」にこんな問題を解かせることは諦めたのでしょう。

 代数がだめなので、化学も物理も必然的に無理。2000字を越える常用漢字は部分しか読み書きできず、当然、英語のアルファベットは大文字小文字合せて52字を全部は書けないでしょう。ひょっとしたら、読めないかも知れません。

 法の精神も、民主主義の意味も、最高裁判決の意味も、そんな人間社会の高度な取り決めなどは理解の埒外で、聞いたこともないでしょう

 99%の人はそんなものです。どこかのコマーシャルで天才や秀才だけがこの世界をつくったのではない、俺たちがいなかったらできないだろ、という意味の事を言わせていました。それは真実です。ただし、天才・秀才は余人に換えがたい存在ですが「俺」はいくらでも置き換え可能です。「俺たち」は必要でも個々の「普通」の「俺」は必要ではありません。

 甲賀市の市役所の住人、町内会の役員どもは、みな、こんなものなのでしょう。

 

囲碁で人工知能が人類に勝つ日:機械が人間に勝つ日は来るか

 囲碁で最強レベルの人間にコンピュータが4勝1敗で勝ったということで、読売のような典型的大衆紙まで人工知能の話でもちきりです。この棋士、現在では世界ランク4位とか(友人に聞いた話で未確認です)。かつてはチャンピオンになったこともある間違いなく最強グループに入る人のようです。

 

 以下では、

 学習について

 論理について 

 直感について

 考えてみます。

 

読売ONLINE

「2016.3.16

「アルファ碁」、韓国・李九段に勝利し4勝1敗
2016年03月15日 22時59分

 【ソウル=川村律文】英グーグル・ディープマインド社が開発した囲碁人工知能「アルファ碁」と世界のトップ棋士である韓国棋院の李世●(イ・セドル)九段(33)の第5局が15日、ソウル市内のホテルで行われ、280手まででアルファ碁が勝利した。(●=「石」の下に「乙」

 人工知能と世界最高の棋士による囲碁史上に残る決戦は、通算4勝1敗と人工知能が圧倒して終了した。

 この勝利の意味について少し考えてみます。ゲームの難しさを、手の数としますと、

 「

ゲーム中の考えうる局面数はオセロが10の60乗、チェスが10の120乗、将棋が10の220乗であるとされるのに対し、囲碁は10の360乗程度である。

 」

だそうです。

 これがどんな数かはなかなか実感は無理でしょう。因みに、ビッグバンで今の宇宙ができてから137億年、そうです、たったの137億年しか経っていないのです。

 ホーキングHawkingの著作に「A Brief Story of Time」というものがあります。この題名はダブルミーニングになっていて、「時間について簡潔に書いた物語」という意味と、「まだほんの短い時間しか経っていない、その時間の物語」という意味です。時間は事象の変化でしか計測できないのですから、宇宙ができる以前には存在しません。だから、時間も、それができてからほんの137億年しか経っていないという意味です。

 さて、本題です。

137億年=1.37x1010

ですね。10の10乗年です。

秒で表現しても、

4x1017秒。たったの10の17乗秒です。

 

 「乗」というのは怖いのです。たとえば、1秒で1兆手を読んでも、1012手にすぎません。すべての手を読むには、10360/1012秒かかります。つまり、10248秒です。仮に、数年でコンピュータの速さが1兆倍になったとしたところで、10336秒に減るだけで、要するに人間の知恵など無意味な時間がかかるということです。

 1年は3x107秒にすぎないので、秒じゃわからない、年でという人は、これで割ってみればわかります。

 こんな大きな数には名称さえついていません。我々の日常生活では精々が兆までです。京(けい)コンピュータというものが、やっと出てきましたが、日常的ではありません。

  名称のある最も大きな数が「無量大数」です。これが色々と説はあるのですが、10の68乗です。

 

 囲碁や将棋などは必勝ゲームで必勝法が存在しますが、こんな手数は計算できないので実際には必勝法を実行できず、ゲームとして成立するのです。例えば、1時間で全手を読めてしまえるならゲームにならないですね。後攻が勝つ必勝ゲームならじゃんけんで先攻、後攻を決めた途端に勝負がついていますから、ただのじゃんけんと変わりません。必勝法は見つかりましたかという質問がWebにあるのですが、この記事でわかるように、すべてを読む方法です。プログラミングは簡単なものです。ただ、現実にはこのプログラムは解を出して停止するということはありません。10の200乗年後に停止しても仕方ないといいますか、それまで銀河はもたないのではないでしょうか。

 

 さて、人工知能と呼ばれているものには、本来のホモサピエンスの知能を実現するものと、人間のもつ非知能的なパターン認識に属するものがあります。定理の証明、自動翻訳を始めとする自然言語処理ー自動要約、会話理解、カナ漢字変換ーー、計画立案などは知能的な人工知能です。これらの実現には論理を使います。 一方、文字認識、音声認識などの認識系ではパターン認識技術を使います。論理を使った知能では結果を、なぜそうなったか説明できますが、パターン認識ではなぜ正解なのか説明できません。そこが大きな違いです。普通の動物はこちらのパターン認識能力で、敵を見つける、獲物を見つけるなどして生きていますが、人間だけはなぜか、論理脳を発達させています。

 ではゲームはどうか?麻雀やポーカのような必勝法が無い、運を天に任せるゲームは統計などを使います。一方、将棋、囲碁、オセロ、チェスなど必勝法があるゲームは本来論理的なのですが、上に書いた事実上無限の手数があるので有意に有限な時間内では論理展開できません。そこで、パターン認識の手法を使い、場合によれば、そこに論理を援用するのでしょう。

 今回のアルファ碁は、過去の棋譜とそれを覚えて現局面に適用するという、ありふれた昔から普通に行われている方法を用いたパターン認識の手法です。といいますか、人間もこうして上達していきます。入試だって、赤本で過去問を解いて力をつけますね。同じことです。で、その過去問を大量に用意したものを、研究者のあざとい表現では、ビッグデータと呼びます。大量のデータ、大量の過去問というつまらない意味です。

 

 それを覚えることを学習=ラーニングと呼びますが、偏差値70程度以下の生徒がやる、ざっと流すだけの学習ではなく、75以上の生徒がやる徹底的に覚える学習のようなものを深い学習、ディープラーニングとよぶわけです。コンピュータで行うこの種の学習は論理的ではなく、勝ったパターンを覚えていて、それを使う局面を学習するだけです。なぜ勝ったのかは分かりませんけどね。昔からあるパーセプトロンの改良版ですね。多層にして、どんどん深くするのでデープというわけです。上でリンクしたWikiには大したことは書いてありませんが、もっと探せば多層の絵があると思います。

 では、過去の棋譜を現在の局面に適用する学習をどのようにしたか?最初は人間が教えたそうです。教師あり学習などと言います。そしてある程度、学習が進んだところで、アルファ碁同士で戦わせ、自己学習させたと聞いています。

 というわけで、アルファ碁の用いている方法は簡単です。やったことは単純に、brute force 腕力ですね。ハードディスクやメモリーが膨大とも言える容量をもつ時代になった。CPU速度が3~4GHzなどという途方もない速度になった。複数のコンピュータを結合して分散処理するOSが実現できた。1202台のコンピュータを使ったのだそうです。

 

 このような研究は実は日本ではいち早くされていました。RWCPという、実質、国家プロジェクトです。Real World Computing Partnershipです。御役人と大企業の合作ですから、ゲームなどというビジネスにならないものには使わなかったのですね。

 

 さて、囲碁で勝った人工知能はその他のあらゆる面でも人間に迫るのでしょうか?上に書いた原理を見れば分かると思いますが、極めて人間的な方法です。2000年ころまでは、速度と容量、データ収集の問題があり実現できなかったのですが、今やインターネットはビッグデータそのものです。記憶容量は果てしもなく大きくなっていきます。処理速度は頭打ちですが、人間の神経系よりははるかに速いでしょう。分散処理で何万台ものコンピュータが統合されれば、人間を凌駕するコンピュータシステムができても不思議ではありません。SFのHALゾラックが可能になるでしょう。それにメカトロニクスを組み合わせて人間型ロボットをつくれば、アトム、8マンもできる時代が視野に入ってきました。尤も、彼らは超人なので、まだC-3PO止まりでしょう。

 

  コンピュータが直観をもったという言い方がされてもいますが、パターン認識なので当たり前のことです。直観とはなんでしょうか。問題に対して解を見つけたが、論理的に説明できないものですね。論理的思考手続きを踏まずいきなり出した解です。正解であるかどうかもわからない。人間の脳は神経のネットワークを構成していて、多分パーセプトロンのようになっているのでしょう。問題に対して過去の解がその神経ネットワーク=ニューラルネットワークの中にできています。正解とは限りません。それを直観と呼んでいるのですが、可能なら論理的解の方が、解の正当性を担保できて良いのです。しかし、膨大な事象の中で解を見つけようとした場合、論理では解に行きつかないので直観が有意義なこともあるのです。といいますか、人生って直観だけでいきているようなものですね。過去問+神経ネットによる学習が直観を担っているのです。