聞き流すだけで英会話はできません

 当たり前のことですね。英会話をしたければ、最低でも2000語程度の単語を覚え、且つ、最低限の英文法を理解していなければ、できるわけがありません。これが難しいのです。だから英語ができない日本人は山ほどいます。

 それにも拘らず、聞き流すだけで英会話ができるというコマーシャルが盛んに流れているので驚いています。ベーシック英語とでも言う単語群があって、1000語程度です。これだけ覚えれば最低限の英語が分かると言う数の単語です。ただ、これだけでは却って難しいとも言われています。数が少なすぎて熟語で表さなければならない動詞が多く、動詞+副詞の形を使うからです。これは大学入試に出るような難しさです。副詞が付くと、元の動詞とは何の関係もない意味に転化するからです。誰もが知っている「give up」がそうですね。これはあまりに有名なのでご存じでしょうが、「与える」という元の意味と何の関係もない「断念する」という意味になります。このようなものを多用されると、もうお手上げです。

 ですから、2000語以上は記憶している必要があります。もちろん、聞き流すだけで英会話が上達すると謳っている企業に言わせれば、そんなことは当たり前でしょうというでしょうが、意外に当たり前ではないんじゃないでしょうか。

 で、今朝、寝ぼけ眼で見ていたコマーシャルでは、若い外人さんが意味不明の発音をしていました。それで、分からないでしょ。英語はスペルを見ても音は分からないのです。聞かなくちゃ上達しない、といいながら、この若者に幾つもの英語を発音させていましたが、全然、わかりません。当たり前です。彼は分からないように発音しているのです。この企業の主張は間違ってはいません。日本人がスペルから日本語の音体系で考える音は、英語のそれとは異なるので初心者は実に分かりにくいもので、耳から覚えた方が良いのですが、それを強調するあまり、態と分かりにくい発音をさせて分からないでしょう、というのは如何なものかと。

 英語の発音は実にはっきり唇を動かします。ところがコマーシャルの若者の唇はほとんど動いていません。日本語でも「ケッ」って東北弁で言われたら、それが「食え」ということだと分かる人は少数派でしょう。なんだか東北弁的英語を聞いているような気がしました。「こりゃ、わからんぞなもし」と思いました。昔、リンガフォンという似たようなものがありましたが、あの発音は実に明瞭で良くわかりましたけどね。

 ただ、じゃあ、米国に行ったらアナウンサやオバマ大統領のような明瞭な物言いを一般市民がしているかというと、それは違います。リンガフォンで自信満々で渡米して、最初に脚をおろしたサンフランシスコで往生した記憶があります。まあ、コマーシャルに出ていたあの若者の発音が聞ければどこに行っても大丈夫ではありましょう。