食材の虚偽表示

 食材の虚偽表示が話題になっています。2流企業はともかく、高島屋、大丸松坂屋までそれを行っていたという報道には目を疑うばかりです。そういえば、Dr.もある超一流デパートでファーを買った時、似たような経験をしました。展示品の中には欲しいものがなくて、ロシアンセーブルと名指しをした所、店はなんと金庫風の入れ物の中からそれを取り出してきたのです。価格もそれなりのものだったので、本物と信じて購入しましたが、これが偽物とは言わないまでも、本物でもなかったのです。後に知ったのですが、市場価格はそのデパートの価格の1/5のものだったのです。簡単に言えば、一枚革ではなく一枚革に見せたパッチワークのようなものだったのです。

 問題は、今のデパートは、デパート直営の部門は少なくて、テナントばかりであることでしょう。そのテナント管理がデパートに出来ていないのです。

 ところで、新聞は「虚偽表示」と報道していますが、当のデパートやホテルは、決して「虚偽」とは言いません。「思い違い」、「認識の甘さ」などと言葉を濁しています。「芝エビ」「車エビ」「伊勢海老」は固有名詞であって、「小さい海老」「中くらいの海老」「大きな海老」ではないでしょう。それを「芝海老」は「小海老」のことだなどと大見得を切った阪急阪神ホテルズの料理長というのはどんな神経をしているのでしょう。

 彼は実際にはそうでないことを知っているのでしょうね。ただ、会社という組織を守るためにあのような虚偽を吐いたのでしょう。辞任した社長は珍しく潔い処置をとりましたが、それでも「虚偽表示だとお客様に思われても仕方ない」というような喉に物が詰まった弁解しかできていません。

なぜでしょうか?彼らは一様に「裁判」という最悪の事態を思い浮かべて物を言っているからでしょう。もし、これまでの売り上げは全て詐欺によるものであると認めたら検察に刑事事件として扱われてしまうでしょう。民事としても「レシートを持ってきたら換金する」などと甘い事を言っておられず、全額をなんらかの方法で償還せよという「集団訴訟」を起こされた場合、明確に「虚偽表示でしたすみません」などの発言は有罪証拠になるからです。「思われても仕方ない」「思い違いだった」「認識が甘かった」ならば、犯罪意図が認定できないので、検察も何ら動いていませんし、民事裁判になっても決定的な証拠にはなりにくいからです。

 それにしても、この失われた20年は不況でどの企業も苦しかった時代です。大学生の卒業生は6割しか正規採用されず、正規社員で就職してもそのうちの3割以上が3年以内に辞めてフリータ、非正規採用に回っているのです。偏に、対ドル為替が間違っていて、余りに円が高くどの企業も青息吐息だったからでしょう。貧すれば鈍す。この言葉がぴったりの事件でした。

 

追記 これを書いている時、家人にきっと明日は三越・伊勢丹がでると話していたのですが、残念なことに2013.11.7の朝刊にその報道がありました。ブルータス、お前もか!デパートで法外な値段の物を買ったり、食べたりしているのは、こういう事がないという信用を買っているのであって、象徴的に言えば包装紙を買っているのです。その包装紙がまがい物では、デパートの存在意義がありません。こういう商法を、テナントがやっていたとはいえ、デパートの信用でやっているわけですから、10年後、デパートはどうなっているのか?無くなっているかも知れませんね。

 昨日、ホテルオークラも謝罪しました。やんぬるかな。