株式市場の生態

今朝の読売の一面が実に面白い見出しの並びになっていました。トヨタ最高益、電機も回復鮮明:日立、パナソニック」と製造業復活記事と並んで「株終値610円安」です

これは常識的な知識では理解できません。常識的に株は企業の体力を示す指標だと考えていると間違えるという事を意味しています。

考えて見れば、株とは何なんか意味がわからなくなります。一体、価値があるものかと。元々、企業が配当を約束して発行している一種の債権です。その意味では、買取価格に対する配当があるので、銀行預金と同じで「金が金を産む」という意味がありました。50円で株を買って年に5円の配当があれば10%の利子を得た事になります。銀行利子や国債より十分に高い利子(利回りと利子の区別は面倒なのでしません)ならば、元本を失うリスクを冒しても買う人が現れます。企業の業績が良ければ配当も良くなるので、額面50円の株を100円出して買っても銀行利子や国債より遥かに高利子だと感じる人もいます。この辺から、怪しくなってくるのです。

50円額面の株が果たして1000円の価値があるのでしょうか?10%だった利子が、0.5%の利子になってしまいます。つまりは、利子などどうでも良い、それでも買いたいという人々がいるので、その売買価格の鞘どりをキャピタルゲインと言いますが、これを狙う事が本命になってしまったのです。これが今の株式市場で株券そのものには何の価値もないでしょう。

つまりは、株式市場は常に企業業績を示しているわけではないということです単なるマネーゲームの場に過ぎません。ポーカをしているトランプカードに何か価値を感じる人がいるでしょうか。まあ、500円か1000円くらいは価値があるかも知れません。しかし、それで100万円、1000万円、1億円と賭けているのです。それはトランプの価値ではありません今の株はこのトランプカードにすぎないのです。

今の下げが何によっているかは昨日のページで書きました。マネーゲームの主たる参加者であるヘッジファンドに破綻したものがあり、株を売って顧客に金を返している。それで株が下がった。これまで信用買いで買い登ってきている烏合の衆は驚いて狼狽売りに出た。何しろ、この上がり方なのですから相当の信用買い残があったはずで、これが狼狽売りすれば、そこそこ下がります。それを見たヘッジ共が嵩にかかって空売りを仕掛けてセリングクライマックスになった、というような構図なのでしょう。ですから、日本企業の最高益などとは何の関係もないところで株価が上下しているのです。

企業業績と株価がリンクするのは、市場がある程度理性的に動いている場合だけです。ただ、その状態というのは株としては面白くもなんともありません。ベターと凪いだ海みたいなもので全然釣れないからです。この場合、テクニカルという標識、ファンダメンタルズという標識をみて市場参加者は株を買っています。言ってみれば、知的な戦略を組みながら整然と行われているアメフトの試合という所でしょう。上の指標はある程度使えます。ところが、選手の一人がちょっと相手を突っついた。これがきっかけとなり、バトルロイヤル的状態になって収集が付かなくなった。これが、1月末からの市場の状態です。こんな状態になったら、もう選手が、つまりは空売りを仕掛けているヘッジファンドが疲れてしまうまで待つより仕方ありません。

 

株価はちょっとした「うわさ」「期待」で上がっていきます。実質的価値の向上がなくても上がるのです。それは、市場参加者皆が、株はそのように動く物だと信じている、諒解がある、からです。別に、5年で0.1%の利子でしかない配当が、10円になり、0.2%に上がったからその株を買うのではありません。そんなものはどうでも良いのです。皆が上がると思うから、皆が買うので上がるというマッチポンプ機能で上がっていくのです。だから、落ちるのも早い。実体のない上がりですので市場参加者は何時、噂の化けの皮が剥がれるかとビクビクしている。特に、機関投資家と呼ばれる法人は人の金を預かっているのでそのようです。何かあるとたちまち「取りあえずの売り」をします。様子を見て何も無ければ再度買いに入ります。これの先に先にと行けばその落差で儲けることができますが、普通はできません。普通の人々は、その後を後を追って、「高く買って、安く売る」損をしているのです。

 

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