妻でも亡夫の預貯金を下ろせない?

 朝6時頃のテレビ東京Newsモーニングサテライトを見ていますと、銀行がこのようなコマーシャルを流しています。そうなのです。これは不便ですよ。一番良い方法は、夫が、あるいは妻が、あるいは肉親が死の床につきそうなら、元気なうちに、すぐに全額おろしてしまうことです。が、本人が窓口に行かないと下ろせません元気なうちに本人が下ろしてしまわないと、後の手続きが死にそうなくらいに面倒になります。特に兄弟が数人いて、異なる地域に住んでいて、親も結婚して以来、引っ越ししていたとなると、もう100万円程度なら捨てようという気分になるくらいに面倒です。以前もどこかに書きましたが、郵貯の奥座敷にいる連中はいまだに木端役人のなれの果て根性なので、窓口の愛想の良さとは裏腹に死者の口座を解約して下ろそうとしたとたんに牙を剥きます。さっさと、とりあえずは通常の銀行に移した方が利口です。

 さて、本題に戻って、妻でも死んだ夫の預金を下すのは面倒で時間がかかり、葬儀費用も下ろせない状態になりますので、信託にしなさいというコマーシャルです。信託部門を持っている銀行は、生前にあらかじめ信託契約しておけば、例えば、葬儀費用200万円までは妻でも死んだ夫の口座からお金をおろせるというものです。全額は下ろせません。口座に10万円しかなければ別ですが。

 信託契約を結んでも、1000万円程度でも遺産がある場合、それを全額おろすという事はできません。夫がまだ生きていて入院している場合、夫のカードで下せますが、一日に50万円程度しか下ろせず、更に月額制限もあるので、2か月くらいかかるかも知れません。その間に、夫が涅槃に行ってしまえば、面倒な手続きが必要になります。

 夫が入院していて動けない場合、カードだと一日に下ろせる額に制限があるので、妻が夫の通帳と印鑑を持って窓口に行けば全額おろせるかと言えば、上に書いたようにできません。本人が行かなければだめなのです。おまけに事情を話すと、遺産を脱税するのかと銀行に疑われそうです。そろそろ、遺産の控除が4000万円程度に落ちますが、上の場合、1000万円なので脱税なんかになるわけはありません。

 夫との結婚証明や、子供たちの出生証明、引っ越せば、結婚した時の住所と現住所が戸籍謄本でつながるように追いかけなければなりません。本籍を引っ越しのたびに移していると大変なことになります。おまけに、戸籍をコンピュータ化した時に、安く上げようとしたのか、とにかくいい加減な方法をとったので、役所に手書き時代のものと2種類の戸籍謄本が存在しており、一体、どちら必要なのか、誰も分かりません。銀行も、役所も分からないのです。書類を揃えると分かるのですが、その為には無駄な手間と金を使って両方ともそろえることになったりします。

 ということで、信託部も信託銀行も役には立ちません。最良の方法は、本人が生きているうちに全額おろして、自分たちで管理することです。箪笥貯金は盗難、火事などがあるので怖いですから、何か他の方法を講じなければなりません。

 ついでながら、土地の登記関係もこういうことがあるので、大変面倒です。高級官僚は2年ごとにあちこちに引っ越ししますが、彼らは、本籍は移さず、かつ、住民票は2部づつ取って、一部は保管し、引っ越しした証拠が役所の書類でつながるようにしているのだそうです。転出と転入が住民票でつながって行くのですね。これがつながらないと不動産の登記関係で面倒なことになります。何しろ、役所仕事なので、国の書類でつながる証明ができても、不動産登記は地方公共団体の仕事なので、国の書類ではダメなどということもあり得ます。