元本安心で、資産を2倍以上に殖やす??

 「元本安心で、資産を2倍以上に殖やす」などという詐欺的広告がいまだに許されているのですね。驚きました。普通の人は、これをよんだら「元本保証で、資産が必ず2倍になる」と勝手に思ってしまうでしょう。それが狙いなのです。「安心」と言っただけで、「保証」などとはどこにも書いていないということでしょう。

 「米国政府が元本を保証してくれる」のだそうで、この広告の会社が保証しているのではないのですね。米国政府の保証というのは、米国債ということでしょうか?確かに、額面+利子はドルで償還されるでしょう。しかし、為替差損というリスクがあります。2000年頃に日本のメガバンクが残らず破綻し、再編されて、三菱東京UFJ銀行などという舌をかみそうに長い名前の銀行ができたのは、一つには、1985年のプラザ合意以来の円高で米国国債を大量に買っていた日本の金融機関が膨大な為替差損を出したためでした。ドル建てでは額面の保証はありますが、円に戻した時は目減りするかもしれません
 プラザ合意の時期の金融・為替の戦いを古本屋でみつけた「マネー敗戦」吉川元忠 文春新書で読んでみました。すごい時代だったのです。

三菱地所による買収劇
1989年10月、三菱地所ロックフェラーセンターを約2,200億円で買収した。これはバブル景気期の成金的な「ジャパンマネー」による海外資産買いあさりの象徴的な例であり、アメリカ国民とニューヨーク市民の大きな反感を買い、アメリカでジャパン・バッシングが広まるきっかけとなった。
しかし、後に不動産不況(バブル崩壊)で莫大な赤字を出すことになり、1995年5月に連邦倒産法第11章を申請し、運営会社は破産。」--

ロックフェラー・センター - Wikipedia

 

 この広告を読んでいた所、ポール・アードマンの「ゼロクーポンを買い戻せ」を思い起こしました。これも古本屋です。Book offに行けばあるのではないでしょうか。

 ウィリーという経済犯がサンフランシスコに近い小さなユカイア市の地方債を偽造して儲けようとする物語です。40年償還という長期の地方債で、利子は40年後にまとめて支払われるというものです。通常の債券にはクーポン券がついていて、それを毎年1枚づつ千切って利子と交換するのですが、そのクーポンが付いていない債券なのでゼロクーポン債と呼ばれます。40年後に2倍になる債券の場合、実際には額面の半分の価格で買い、償還時に額面の金額が貰えるものです。

 さて、こんな会話がなされています:

「『ということは、ユカイア市からの引受契約をこの週末のあいだにとったってことか?』
フランクがきいた。
『いや、そうじゃない』ウィリーが答えた。『契約があろうとなかろうと、おれたちで債券引受を進めるってことだ。』・・・

『そんなことをしたら、あんたはまた刑務所に逆戻りだよ。・・・』
『そんなことにはならないよ。第一、だれかに見破られさえしなければいいんだ。・・・紀元二〇三十五年になるまではだれにも見破られない。そのころにはおれたちはこの世にいない
『まてよ、どうしてこれが四十年間もばれないって言えるんだ?』
『償還期限四十年のゼロクーポン債の引き受けだからだ』
  ・・・
『四十年のゼロクーポン債なら、四十年間は金が動かない。・・・いちど取引が行われてしまえば、金もクーポンも動かないし、そのほかに動くものはいっさいない。だから買い手の機関投資家も、償還期限が来るまでは、そんなものを買ったことすら忘れてしまう。さっきも言ったとおり、そのときまではにはおれたちは墓の中だ』

-- 「ゼロクーポンを買い戻せ」pp.334-335 ポール・アードマン 森英明訳 新潮文庫 2004年(会話文の翻訳はいただけません。欧米、特に欧州のエリートたちには「おれ」「あんた」などというヤクザのような言葉遣いのマナーはありません。「I」「you」は、状況に合せて訳してもらいたいものです。読みづらい訳です。)

 

 40年で倍ですね。多分、くだんの広告もこんなところではないでしょうか。最近発表された資料によると、星の数ほどあるヘッジファンドの上位100社の平均ゲインは7%/年なのだそうです。

 ところで、自分で上手にやれば、株式市場なら2倍というのはほぼ確実に5年で達成できます。言うまでもなくほとんどの人は「上手に」はできないのが難ですが。

私、失敗しないので的株式投資がしたい人のために - dr-yokohamanerのブログ

 ここには20歳代で就職し、60歳代で定年退職するまでの約40年間のプロジェクトを書いておきました。
「 5年で2倍になったとしましょう。30代前半までの10年で100万が400万になります。面倒なので500万としましょう。同じようなペースで、40代前半で2000万円です。実際にはそんなに調子よく進行しないので、50代で5000万円を目指すのが良いでしょう。60代で1億を目指します。これは、「私、失敗しませんので」方式を実行できた時の話です。