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日本の家電がだめになったわけ

 先日、ビジネスニュースのような番組をみていたところ、中国のHaier:ハイアールの冷蔵庫が出てきました。確かに、家電の大規模販売店にいくとハイアールの冷蔵庫などが置いてあります。家電程度でも、なかなかのハイテクで中国あたりの技術では作れるはずもありません。見た目は似ていても、性能で非なるものになるのです。不思議に思っていたところ、ハイアールの技術者として出てきた人物は元パナソニックの技術者でした。こうなると、特許もノウハウもありません。頭脳が流出していては、自分たちで書いた特許など、(どの道、中国は無視するとはいえ)合法的に回避できてしまいます。

 実は、人材の流出=敵に塩を送る 行為は今に始まったことではありません。日本の独壇場であったコンピュータのDRAMの製造技術も同じようにして韓国に漏れ、サムスンの大躍進を可能にしたのです。もともと、DRAMは同じ記憶単位を100億個などを連ねただけなので、設計技術はそれほど難しいわけではありません。ならば、製造装置さえキヤノンニコンから買えば、誰でも作れてしまうことになります。しかし、日本のメモリー製造企業は高を括っていたのです。なぜなら、半導体製造装置は使い方が非常に難しく、ノウハウの塊だからです。使用説明書を読んでも、ミクロな半導体は作ることができないので韓国にはできないよと思っていたのでした。

 しかし、サムスンは日本より安い価格で同じものを売り出してきたのです。簡単なことです。技術者が買収されたからです。これらを操作する技術者というものは、技術者というより、技能者で企業内で高い地位をもっているわけではありません。工員と言ってもよいでしょう。日本の企業は彼らに相応しい待遇をしないのですね。

 ということで、「金曜特急:Friday Express」という言葉が生まれました。金曜の夜、日本での仕事を終えた工員は、夜の便で韓国に向けて飛び立ちます。あちこちのメーカの人間が同じ便に乗ることもあるようで、もし知人に会っても挨拶などはしないことが暗黙の了解になっていたと聞いています。こうして、韓国の工場で半導体製造装置の操作法のノウハウを教え、日曜に帰国するのですね。数年後、日本のDRAM事業はすべて撤退しました。

 ソニーパナソニック、シャープ、日立などの家電技術者も、延いては企業自体が文系の技術に無知な経営によって同じ目にあっています。井深氏が健在のソニーなら、コンセプトだけのスマホなどアップルに取られることはなかったでしょう。あれは典型的なソニー的製品なのです。盛田氏の太鼓持ちで、不肖の息子の不祥事をモグラたたきで潰す役目でしかなかった井出氏を盛田氏は愛い奴じゃとして社長にしましたが、彼には技術のソニーを経営するなど無理な話でした。尤も、彼はソニーを金融会社にしてしまい、そこで生き残っていますので、20年後には金融のソニーしか知らない世代しかいなくなるでしょう。

 米国は(誰にでもできる)普遍的技術で日本に負けました。日本は普遍的技術だけではなく、(職人芸的)ノウハウを人的に流出し、中国や韓国に負けつつあります。近視眼的経営を行った電機メーカの経営陣の罪は重いものです。今、その最先端を走っているのが1500億円の不正経理を行った東芝でしょう。