会話の技法:フジテレビ新報道2001「中高年労働者の現実」を視て

 これまでも、若年者の労働市場に関しては何度か書いて来ました。概数で言えば、18歳人口120万人、高卒正社員労働市場17万人、大学進学率50%、大学卒業者数50万人(退学、除籍による減耗のため)、正社員就職率60%。離職率:3年以内に30%以上。このデータから、20-40代半ば(バブル崩壊後)の正社員の割合は4割程度ではないかと勝手に推定しています。

 で、今朝の掲記番組では40代後半ー50代の人々の話でした。バブル時代に就職した人が主体です。そして、新卒でさえまともに就職できない時期に中途退職してしまった/させられてしまった方々です。正社員としての再就職は腕に技術を持っていないと難しいであろうことは容易に想像できます。番組で紹介された方々が、統計的にその世代を代表する事ができるのか、典型的な一例なのかは不明ですが、それでも、敢えて問題点を上げれば、腕に職が明示的にはなさそうです。

 

 ソニーパナソニック、日立、シャープなどのこの世代でリストラされた技術者がアイリスオーヤマに再就職し、家電開発している報道を以前見ましたが、技術があればこういう場合もあるのでしょう。尤も、年収は千数百万から、大企業の役職定年と同じ800万円程度に落ちてはいます。しかし、時給900円のバイトとは比較の仕様もないでしょう。

 

 さて、本論です。番組ゲストで東大卒の文系の方がいました。彼の話し方を聞いていて、3つの問題点を感じました。再就職が難しい一つの原因ではないでしょうか。

 1.人の話を聞かない

 2.その結果として、聞き手への思い遣りが表現されない

 3.結論を一言で言えない

です。詳しい事は忘れましたが、例えば、休職して復職するのにブランク期間があると不利という点について、司会の「どの位の長さがあるとだめなのですか?3か月ですか」という質問に対して、Dr.Y(本物の大学の理系学生はこういうことを徹底的に叩きこまれます)なら。

1.いいえ、--- 貴方の話を聞いているよとの表明=思い遣り

2.3か月と言い切ることはできません。--- 結論

3.なぜかというと、休職した途端に、他の人がその職に入りますので、

 その時点で既にもどる所はないのです。--- 詳細説明

 

 と答えますが、彼は、3から入っています。自分の言いたい事を言うだけという態度です。相手の話を聞いていることを示し、思い遣りをもてば、まず、1.が要ります。その上で、2.の結論を簡潔に話します。そして、3.詳細事情を話すのですが、これができていませんでした。これでは面接員(面接官ではありません、「官」は公務員です)をイラっとさせてしまうことでしょう。

 このブログを見れば分かるように、Dr.Yと言えども、日常は、こんな順番では話しません。言い訳やら、周辺事情やら、感情に映るままに話します。ここで挙げた話し/書き方による文はExecutive summaryとも言われます。企業の報告書の冒頭に忙しくてイラチな上司向けにつける簡潔にして要点を、要点だけを突いた要約です。

 

 蛇足タレーラン外相

「閣下、オランダから40ページにわたる覚書が届きました」

「そんなものは読みたくない」

「どうしてですか、閣下」

「道理がある者は40ページも書かんよ」

  -- フランスジョーク集pp.53-54 実業之日本社 磯村尚徳編著

 

 良く、半分冗談で(半分は本気で)、報告書は、前書きと、後書き、だけ読めば良いと言われます。前書きで、何故・何をやったか、後書きでその結果どうなったか、が分かります。本文はその裏付けやら、方法やらが事細かに書かれているでしょうが、Executiveには理解できません。書く側から言えば、前書きと後書きに注力することが重要なのです。