リリカという薬

 むずむず脚症候群に使える神経障害性疼痛薬です。

 むずむず脚というと、「虫がふくらはぎの中を這っている感覚」という説明が良くされますが、それとも違うと思います。異常な感覚がふくらはぎの中に生じ、気持ち悪くて身を揉みたくなり、とにかくじっとして居られない症状と言った方が良いでしょう。居眠り的ななまねをすると起きる人もいます。そういう時には、完全に覚醒するために、冷たい風にあたって歩き回るとか、ガムをかむとかすると治ります。

 正式病名が決まり「下肢静止不能症候群」となっています。この方が症状を良く表していますが、その代わり具体性を欠きます。致し方ないでしょう。

 むずむず脚症候群の人は5~3%居ると言われていますが(どうやって調べたのか分かりませんが)、本人達が、それが病気であると認識しないために医師に掛らず、その結果、大学病院でさえ症例が少ないので医師に見識がありません

 大学病院というと、無条件に信頼を置いてしまう人が多いと思いますが、群馬大学医学部付属病院に代表されるように、一方では、Dr.Xドラマに見るような出世欲と保身で固まっている人間がいて、まるで信用できない存在でもあるのです。むずむず脚症候群の症例を蓄えていて、お詳しいのは大阪府堺市の阪南病院の黒田医師くらいではないでしょうか。関東には専門医は居ないと言って良いでしょう。優れた医師がいないと言うわけではありません。症例を持っている医師がいないという意味です。

 さて、下肢静止不能症候群となずけられた時に、第一選択薬としてビ・シフロールが決められました。しかし、感染症のように体外から入ってきた細菌などを殺す薬と違って、むずむず脚症候群を治すには自分の体そのものの調整をすることになります。つまり、個々の個体により、遺伝子によりと言っても良いでしょうが、効果が異なります。

 そもそもむずむず脚は脳内の神経伝達物質の異常にあると言われています。ドーパミンが少ないのでしょう。それで、神経に働く薬を使います。向精神薬なのです。だから、ビ・シフロールを用いると、錯乱状態になりそうな気がする人もいるでしょう。そんな人には使えません。

 むずむず脚は鉄分欠乏で起きる人もいるようですが、どうもそんな単純なものでもありません。それで、普通はドーパミン受容体作動薬を用います。神経のシナプスに存在するドーパミン受容体を活性化するのです。受容体が受け損なったドーパミンはそれを分泌した方にも戻っていき、負帰還機能が働き、こんなに沢山戻ってきてしまうのなら余っているのだから、これ以上は出す必要がないと神経が判断して分泌量が一層減り、一層むずむずしてしまいます。これを防ぐには分泌されたドーパミンを落とすことなく受け止める必要があり、それを助けるのがドーパミン受容体作動薬です。

 受容体を活性化するより、少なくなっているドーパミンを増やせばよいではないかという発想も起きます。というより、こちらの方が直接的で自然に思えます。民間療法として「むくな」という豆があります。八升豆とも言われます。これはドーパミン前駆物質のL-Dopaを多く含んでいて、体内でドーパミンに変化するとされています。しかし、問題は体内でドーパミンを作る機能がヘタっていて作れないのに、原料を入れて、さあ、もっと作れとやることは、その器官を酷使することになり、最後には壊れてしまい、もっと酷い状態になり、回復可能な状態になる恐れさえあるので、この方法は使われないのです。ついでながら、ドーパミンを直接体に入れても、血液脳関門というものがあるので、脳に到達しないのでしょう。

 最近、ニュープロパッチという肌に添付する薬が出ています。Restless Legs症候群というのが下肢静止不能症候群という名前の由来でしょうか。

 さらに、リリカという神経障害からくる酷い痛みの薬がむずむず脚に効くと言うことが分かりました。脳神経に働きかける薬だから効くのでしょう。人間の体は複雑ですね。