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続・企業人事の内幕

 言うまでもなく、ここに書かれている事は全ての企業に当てはまるものではありません。規模により、古さにより、風土により、様々な形態があることでしょう。オーナ=個人大株主兼創業者が健在の企業などはワンマンでしょうし、既に、創業者など跡形もない、機関投資家しか大株主が居ない企業ではまた異なる形態があることでしょう。

 ただ、そうではあっても、社長を選定する過程はかなりいい加減なもので、そこでコネ=自分に忠実であったなどの理由で前社長がロクデナシを後継社長に選んでしまうと、社長は実質的に専制政治が可能なので、かつての三越・岡田、最近の東芝・西田のような事件が起こります。大臣の場合、よく、首相の任命責任が問われますが、本来、企業でもあって然るべきなんでしょう。勿論、私企業なので、国民への責任ではなく、他のステークホルダー:株主、従業員などへの責任です。三越・岡田事件などは本当に酷いものでした。何しろ、自分の愛人を女帝にしてしまい、三越を私物化していたのですから。あのような老舗でも低レベルの事件が起きるのです。

 前回、人事的に一度見放されたらーー人事慣習上のことで、個人的、感情的、非合理的なものではなくーー定年までそのままの資格で、昇進はない、という話をしました。これは、20代で決まってしまう場合もあります。若気の至りでオフィスで悪戯して人事ファイルに載っていまった場合などです。しかし、誰もそれを教えてはくれません。後輩がどんどん追い抜いて行くので、なんとなく分かるでしょうが、本人は普通、感情としてそれを認めたくないので、ずるずると居続けてしまいます。学歴は、旧帝大以上でもです。そもそも、周りが全員そんな学歴の職場では、学歴など意味はないのです。

 だからと言って、30代、40代の働き盛りの人間に向かって、上司も「君は既に死んでいる」とは言えないでしょう。Dr.Yも言えません。そんな後輩たちには、別の表現で他への転身を促していました。学歴的には輝かしい物をもっていて、ただ、その会社ーー老舗大企業という物は往々にして老獪なものですーーでちょっとうまく行かなかっただけの話なので、他の道をとれば、社会的にはもっと上だと思われる職種に転向できるのです。

 人間は概ね保守的なものですから、なかなか自身ではそのような思考が湧いて来ません。来年こそは昇進するだろうと幻想をもってしまうものです。しかし、背中を押されると、やってみようかと思い至ります。そして、皆、大成功していきました。あらゆる面で、前の会社に居て順調に昇進していただろう条件より、良い条件で就職しています。勿論、彼らの学歴が物を言っているのです。誰にも当てはまることではありませんから、念のため。

 問題は年齢だけです。やるなら、40代までです。前回、書いたように、役職定年55歳という慣習は日本では厳然として生きているからです。今は、企業の募集要綱に年齢制限は書いていけないことになっています。差別なんだそうです。ここが官僚のバカなところで、ポピュリズムに負けてしまうのでしょうか。年齢制限が書いてないからと言って、60歳定年の会社に70の老人が応募してどうするんでしょう。常識がないにも程があり、履歴書は笑い捨てられるだけです。

 40代、50代でソニー、シャープ、パナソニック、日立をリストラされ、アイリスオーヤマに再就職した人たちの物語を昨年でしたか、テレビで報道していました。この話はちょっと違います。この人々は、報道を見る限り、昇進していました。そもそも、これらの大企業では40代になると、皆、管理職になってしまい、現場の技術者ではなくなる結果、管理職などそんなに人数は要らないという範疇の問題に当てはまってしまった人々でした。1500万円前後の年収が、再就職により800万円程度になったということですが、Dr.Yはそれでも、アイリスオーヤマには他人ごとながら、同じ技術者として感謝しています。800万円あれば、なんとか食べていけます。

 家電は軽工業なので必ず人件費が安い後進国に追いつかれて敗北するのです。経済の必然的結果なのでどうしようもありません。アイリスオーヤマに移った人々は、技術者なのですぐに製品を作っていました。アイリスオーヤマ位の規模でしたら、間接経費も少なく、無駄がなく、後進国に立ち向かうことができるでしょう。

 結論のない話になりましたが、このような内幕は知っていた方が有利でしょう。「新・学問のすすめ」に書きましたが、中年になって学歴を更新しても企業内では事実上役にたちませんが、既に本物の高学歴を持っているのなら、それを活かさない手はないでしょう。