胃瘻(いろう)と肺炎について

  胃瘻とは、腹部に穴を開けて胃にチューブを通し、流動食を胃に直接注入する処置です。これが問題になることがあります。

 口から食事ができなくなった高齢者に無暗に胃瘻をしていた時期が、ほんの少し前まであったのです。一時的に口から食物が入れられない、十分に回復可能な若い人になら、一時的にこの処置をすることは意味があります。

 ところが、回復が完全に期待されない高齢者に延命の意味でこの処置をしていた時期があります。私の知人の親御さんはこの例に当てはまり、胃瘻手術をした翌日に死亡したということで、知人は大層怒っていました。

 家族としては胃瘻をしなければ死を待つだけだと言われては、しても死がほんの少し先送りになるだけであるにも拘らず、罪悪感にかられて承知してしまうことになります。これがさすがに医学界でも問題になり、無暗に行わないことになりました。

「胃瘻に対する問題提起
日本では終末期の認知症や老衰の人にも積極的に胃瘻がつくられるようになった。その多くはいわゆる寝たきりの高齢者である。その現状に対して、日本老年医学会は「高齢者の終末期の医療およびケアに関する立場表明2012」を発表した(2012年1月28日)[4]。そのなかで、「胃瘻造設を含む経管栄養や、気管切開、人工呼吸器装着などの適応は、慎重に検討されるべきである。すなわち、何らかの治療が、患者本人の尊厳を損なったり苦痛を増大させたりする可能性があるときには、治療の差し控えや治療からの撤退も選択肢として考慮する必要がある。」と述べている。」

 --胃瘻 - Wikipedia

 

 今でもそうですが、高齢者が亡くなると「肺炎」で死亡という記事が新聞に載ります。これがかなりの頻度なのです。この抗生物質が進化している時代に肺炎で亡くなるなどということはなぜだろうと不思議でした。

 誤嚥なのです。胃瘻をしなければならないような患者は、唾液を誤嚥しています。ひっきりなしに、です。口の中は雑菌の巣ですから、誤嚥により肺に肺炎菌が継続的に送り込まれてしまうのです。こうなると、抗生剤を点滴で24時間送り込んでも、これも24時間送り込まれてくる菌には勝てません。高齢者の肺炎による死亡は、きっとこのメカニズムで起きているのでしょう。