森永ヒ素ミルク事件における官僚と学者と企業の犯罪

 昨日、だったか録画で見たので、一昨日だっかかも知れませんが、森永ヒ素ミルク事件のNHKドキュメンタリーを見ました。ヒ素ミルクを飲んだために後天的に脳に障害が起き、知恵遅れや体が動かない障害を受けた人々と、この企業と監督官庁とその影響下にある学者もどきの犯罪との闘いの物語です。

 企業犯罪と言いますが、企業という入れ物が犯罪を犯す事などできるわけもなく、その中に巣食う人間の起こした犯罪です。この事件は日本中の森永製品で起きたわけではなく関西以西で起きています。最初は一工場の問題であったのでしょうか。ミルクが溶けやすいように加えた添加物が問題であったのです。驚くべき事に、問題の工場は食品としてのその添加物の価格が高いので工業用のものに切り替えたということでした。工業用のものは不純物があってもよいのでとても安くなります。当然のように猛毒のヒ素が混入していたのです。Dr.Yも昔、まだビタミンCが高かった頃、手元にあった化学実験用のアスコルビン酸を飲んでみようかと思い、説明書を読むと、鉛が混入していると書いてあったので止めたことがあります。

 さて、このような危険な工業用材料を試験も何もせずに使ったのが森永です。企業犯罪と言いますが、この材料を使うと進言した者、それを裁可した者が真の犯人なのです。ドキュメンタリーの中ではそれが誰かに言及していなかったのですが、刑事犯として起訴すべきだったのです。

 

 企業犯罪という場合、監督官庁に影響が及ぶ場合があります。森永事件の場合、厚生省でしょう。この事件では厚生省官僚が自分等に責任が及ぶことを恐れて揉み潰しをはかりました。それが、似非学者、悪徳学者と言ってよいでしょうが、恥知らずで、卑劣、心根の腐った学者もどきを動員して第三者委員会と称する、厚生省御用達の委員会を作り森永無罪の報告書を書かせたのです。彼らは、厚生省から落ちてくる補助金あるいは、一般人には見えない、違法ではないが不適切な役得を阿吽の呼吸で期待して厚生省官僚の意を受けた報告書を書いたのでした。悪魔の所業です。本当に第三者委員会と称するなら、透明性が確保できる共産党の人選でやるべきでしょう。共産党もこういう役にはたちます。

 

 さて、卑しい学者もどきとは誰か、報告書が残っています。

「昭和30年12月15日

 森永粉乳中毒事件の補償等に関する意見書

 委員;

  内海丁三

  小山武夫

  田辺繁子

  正木亮

  山嵜佑(佑?;TV映像の字が崩れていれ、確実にこの字とは言えない)

 彼らは、厚生省の金、役得ほしさに悪魔に心を売った人々です。そこで何を報告したか。

 「後遺症は心配する必要はない」

 「後遺症と疑われるものは原病の継続」

であると、どういう実験をしたのか、結論先にありで官僚が喜ぶ結論を架空の状態で出したのでした。

 

 その後、阪大丸山教授が、森永ミルクが原因であるとする論文を書いたのですが、これまた、悪魔に心を売った西沢阪大名誉教授がこれに対し「後遺症はありえない」と何の根拠もなく反論したのでした。恐らく厚生省官僚の意を受けたのでしょう。勿論、金が裏で動いたはずです。違法ではなく、です。

 

 20年近くも森永は口をぬぐっていたのですが、岡山大学の大平昌彦教授、青山英康教授による科学的疫学調査により、これらの症状は森永ミルクによる後遺症と断定され、森永もようやくこれを認めたのでした。恐らく一工場から始まった犯罪ですが、すぐに本社が出てきて企業ぐるみ犯罪に変質したのです。

 企業犯罪とは、犯罪そのものは人間によるものですが、官僚と結び付き、それを揉み潰す小汚ない行為などを指すものでしょう。官僚も学者もこういうことをすべきではないのですが、金のために悪魔に心を売る人間はどの世界にもいるのです