心臓弁膜症の、切らない手術

心臓弁膜症というのは、血液を循環させるポンプである心臓の弁が働かなくなる病気です。長寿の昨今の、この病気ーーと言いますか、故障ーーの原因は加齢です。どうしようもないです。長い間にカルシウムが弁に沈着しセメントの様に石灰化して半開きのまま動かなくなったりします。

 

余り自覚症状がないのですが、階段を上ったりすると息切れがするなどで分かります。しかし、人間ドックで毎年検査しておくことでしょう。

 

このカチカチになった弁はどうやって直すのでしょう。多分一番多いのが大動脈弁狭窄症です。大動脈弁はベンツのエンブレムみたいな円を三等分している弁です。

 

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心臓の付け根にあるのですから、今までなら、胸を切り開いて心臓を剥き出しにして、その付け根にメスをいれ・・・大変な大手術を想像します。しかし、今は切りません。TAVIという方法です。股間にある大動脈から人工弁を付けたカテーテルを射し込み血管内を心臓の弁膜のある位置に運び、石灰化した弁の上に置くのです。元の弁はもう壊れているのでそれを支えに使ってでしょうか?それを潰して人工弁を留置します。

 

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太い注射のようなものを鼠径部に射つだけですので、切っていないんです。当初、3%程度の死亡率があり、ちょっと高いなあと思ったのです。そもそも高齢者用の術式ですので直接の死因との関係が良く分からなかったのですがーーつまり、そもそも寿命なのかーー現在は、人工弁もサピエン3という3代目?で、改良されていますので、死亡率も有意に改善されているようです。

 

それで、Dr.Y家も高齢者にやりました。手術室に入って出てくるまで1時間。手術そのものは30分も掛からず、快調でした。何しろ高齢者なので大事をとって1週間入院しました。予後は元気なものです。

 

術式も確立し、弁という部品も改良されて確立した現在、医師の腕だけが評価ポイントです。その病院の例数と1年生存率などを調べて病院を選択することになります。

 

 自覚症状が余りないと言うことでほっておくと、血管にも心臓にも大きな負担を掛けます。ある日、いきなり壊れてしまうかも知れません。庭に水を撒くホース。先を指先で摘まんで細くし、勢い良く水を出す。あのような感じで心臓から血液が出てくると出口の血管が傷みます。水を土壁に勢い良く吹き付けていると、少しづつ崩れ、ある時、一瞬で崩れます。あのイメージかも知れません。心臓の方も、出ていかない血液に力をくわえますのでこちらも心筋が分厚くなるのでへたって来ます。

尚、この術式は若い人には適用されません。

 

私の考える高齢者大動脈弁狭窄症の手術適応」で検索してください。左のリンクではpdfファイルがダウンロードされます。