スマホのルート:root とはなにか?

「管理者」の事です。MS-Windowsで言えば、administratorです。OSのすべての設定を行う権限をもつ「存在」のことです。具体的には、プログラム、いわゆるアプリのことです。

 

普通、我々はスマホの利用者として「設定」からスマホの設定をおこないます。しかし、OSの開発者や管理者は遥かに多くの項目の設定ができます。もし、ウイルスをウッカりインストールしてroot権限を持たれたら、何でもやりたい放題です。このため、危険な設定をいじられることのないよう、権限に差を持たせてあるのです。一般のアプリは利用者権限しか与えられないのが普通です。

 

Androidを触っていると「ルート化が必要」という用語に会います。そのアプリがルートにしか許されていない「管理者権限を得る」事が必要と言うことです。例えば、電源をオフするアプリがそうです。こんな権限を一般のアプリに許したら、勝手に電源を切られてしまいます。管理者しか出来ないのです。

 

ところで、UNIX系のOSは、管理者のことを何故rootと名付けたのでしょう。大体、UNIXには屈折した名称が多いですね。Androidも、iOSUNIXを下敷きにしたOSです。用語も引き継いでいるのです。

 

 

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元々、Multicsという野心的なOSをMITなどが開発していました。それが、当時のOSとしては高機能で大きくなりすぎ小型のコンピュータで使いたいとAT&Tの研究者がさっさと作ったのがUNIXです。Multi:多からUni:単一にしたのですね。この一連のアクティビティのなかでC言語も作られました。

 

UNIXが「系」を付けて使われるのは、商標という権利のかんけいがあるからです。巨大電話会社であるAT&Tにとって、初期の無力なコンピュータなどどうでもよかったのでしょう。中央研究所であるベル研究所の研究者が何か作って、欲しいというコンピュータ研究者仲間に配っていても気にもしていなかったのです。カリフォルニア大学バークレーUCBは、貰ったUNIXを元に通信機能を入れたものをBSDとして配布していました。Dr.Yも、FreeBSDで散々遊んだものです。

 

所が、UNIXが金になると知ったAT&Tは、急にその権利を主張しはじめ、UCBとの間で係争が起きました。

 

一方で、ある学生が、UNIXアーキテクチャを自分で0からコーディングしたOSをつくりました。LINUXです。UNIXアーキテクチャのOSはあちこちで作られていきました。ただ、商標権の関係でUNIXという名が使えないだけで、性能は本家UNIXより優れている可能性があります。上記BSDと本家AT&T-UNIXのSYSTEM V(five)の時代でもBSDの方が人気が有りました。

 

UNIXプログラム本体は著作権で守られていますが、0から真似をせずコーディングした物には著作権は及びません。もう著作権も切れているでしょうけど。恋愛小説は、「恋愛小説」というだけでは何の権利にもなりません。文章が著作権の対象です。アーキテクチャって、プロットみたいなもの。プロットも著作権の対象にはなりません。そのプロットで膨大な別の文章の小説を幾らでも書けますね。

 

一方で、プロットにあたるアーキテクチャは特許でまもられます。しかし、とっくの昔に公開し、ソースの配布もしていまして、公知です。不特定多数の皆が知っているものは特許になりません。主張できたのはUNIXという文字列だけです。AT&Tは権利の主張に失敗し、この商標も権利を売り払ってしまったわけです。