宝石商法は玉石混交

「天然ブルートパーズは存在しない?」

まず、この記事をお読みください。

天然のブルートパーズ(カット以外に人為的な加熱や処理が行われていない、ナチュラルのブルートパーズ)は、淡い上品なブルーが特長で、ごくごく僅かの量が自然界に存在しています。しかし、現在日本の宝石店には、非常に見事な色の、「天然ブルートパーズ」と称されたものが、驚くほど安い値段で大量に並んでいます。これはいったいどうしてでしょうか?

実は、その青い色は自然の色ではなく、ほとんどが無色のトパーズにX線等を照射したり、加熱して付けられた色なのです。一般に出回っているブルートパーズは、ほぼ全てといって良い程このトリートメント処理が行われ、色や処理方法が確立された地域により、「スカイブルー・トパーズ」や「スイスブルー・トパーズ」、「ロンドンブルー・トパーズ」等の様々な呼称が付けられて販売されています。加熱処理は、その後色の変化は起きませんが、X線等で処理された石は、太陽光に長時間晒すと急速に色が消失し、地色に戻ってしまいます。

ではなぜ、処理により色が付けられているのに、「天然」ブルートパーズなの?と思われる方も多いと思いますが、言うなれば「天然(の素材である無色の天然トパーズに人為的に処理を加えて出来た)ブルートパーズということです。「合成」によって作られたトパーズではない、という意味では間違ってはいないのでしょうが、非常に誤解を招きやすい表現です。

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日本ジュエリー協会発行の「宝石もしくは装飾用に供される物質の定義および命名法に関する規定」が改定されました。

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その中でブルートパーズには一律、「色の変化を目的とした人為的な照射処理が行われています」との開示コメントが付せられることになった様です。これは、鑑別書上では非加熱・非処理のブルートパーズは存在しないということを意味します。

 
この記事を知っていれば、「天然ブルートパーズ」がなぜ高々1000円台の価格で買えるのかが理解できます。楽天やAmazonで「ブルートパーズ」で検索してみてください。
http://search.rakuten.co.jp/search/mall/ブルートパーズ/-/f.1-p.22-s.2-sf.0-st.A-v.2?c=3761
 
トパーズは、相対的に黄水晶(シトリン)より高いので、宝石商はシトリンを(黄色)トパーズと呼ぶ慣わしになってしまっているようです。それで、本物の黄色トパーズは更にインフレ名称が与えられ、「インペリアル・トパーズ」と呼ばれます。この名前でググってみると、やっと相応の価格(カラット前後の石でネックレスやリングに仕立てて、数万円)の商品が現れます。
 どうも宝石業界は玉石混交のようです。
前掲の「歪んだ(ゆがんだ)ピラミッド」の30年前の状況と変わっていないようですね。

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 歪んだピラミッッド(根本き著 すばる書房)から 
 
 なお、高価で売られているブルージルコン、タンザナイトも照射による色付けである場合が殆どなので、それに拘る人は「無処理」と鑑別書に書かれている事を確認する必要があります。しかしながら、「財産にならない」宝石に「無処理」であるが故に1桁も高いお金を支払うのは、金をドブに捨てるに等しい仕業でしょう。エメラルドはクラックやインクルージョンが多いので大方はオイルなどの含浸処理が行われていますし、ルビーも多くは加熱+樹脂の含浸処理で改良されているのです。真珠は水から揚げるや漂白剤で汚れを除き、染色で綺麗に装われます。低価格のトルコ石、ヒスイも染色で美しくなっているのです。その処理が数年で褪せてしまったり、偽物を本物と偽って高い値で売るためでなく、永遠に美しく保つためのものならそれで良いのではないでしょうか。宝石は財産(にならないので)として持つのではなく、美しく装うアクセサリーと認識することが重要でしょう。「宝石は財産」、「婚約指輪は月給の3倍のダイヤ」の類のキャッチコピーはデビアス社を始めとする欲に目がくらんでいる心無い業者の陰謀にすぎません。