「改訂新版 宝石価格の秘密」岡本俊男著 株式会社経済界 昭和５７
という本があります。ここに宝石価格が如何に理不尽で、業界が暴利をむさぼっているかが如実に著されています。典型的な仕組みを示す図を下に引用しておきましょう。
この本の示すところでは、輸入業者によって国内にルース（台座に付けられていない裸石）が入ってからの国内流通経路が故意に何段階か廻されて（仲間卸しといいます。卸仲間の間でそれぞれに利をとって廻して高くしていく。それを買う愚かな客が居るから成り立つ商法です）その段階段階で手数料が課され、輸入時に１０万円であったルビーのルースが例えばリングに加工されて５段階流通で店頭に並んだ時には１４０万円にもなっているということです。
宝石は財産にならないとは、この事を示しています。この本は３０年も前のものですが、デパートや、一部の業者の店頭価格をみていますと、そのような店では何も改善されていないということが分かります。勿論、合理化されている小売店も多々あります。
ところで、２段階流通で、小売の利益を仕入れ価格の１．８倍に設定している店では４３万円になっています。つまり、５段階流通の価格の百万円の単位の「１」が消えてしまっている価格で購入できるということですね。
上の図の読み方を記しておきます。「輸入業者 １０万円」というのは、輸入業者が１０万円で購入したということです。矢印の横の（）内の数字は、その業者が取る利益の係数です。１０万円ｘ１．３＝１３万円で卸か小売に売ったということを示します。
この図ですと２段階流通が良さそうですが、輸入業者が加工業者を使うと、加工業者の原価＋利益が輸入業者によって１．３倍で拡大され、更に小売業者で１．８倍か２倍に拡大されることになります。今では、小売業者が加工業者を直接使う形態もあって、Dr.はそのような店と取引しています。これが一番合理的な価格になるでしょう。宝石はその石の価値にお金を払っているのではなく、途中の経路に入る業者の生活費に払っているのだと考えれば、宝石そのものに財産価値などはないと分かると思います。
デパートで買ったこの１４０万円のルビーのリングを換金しようとして引き取り業者に持ち込むと、まずルビーをリングから外してルースとして評価します。輸入業者が１０万円で買ったのなら、５万円で引き取ってくれるでしょう。残った空リングは地金として評価されます。プラチナ９００で２ｇであったとすると、2013.3.3の時価８０００円強位で引き取ってくれるでしょう。１４０万円が６万円にもなりません。差額の１３４万円は間に入った業者たちの生活費か遊興費なのでそんなものは当然の事として引き取り業者は支払ってはくれません。購入者が愚かであったという事でしょう。
デパートで１４０万円のルビーのリングを買って、高価であるという事に満足していると、Dr.の使っている店で４０万円で買った石より、素人が見ても低品質であることがわかってしまい、がっかりすることになります。宝石は素人には分からないと思われていますが、並べて比べれば素人にもあからさまに分かりますよ。ダイヤなら輝きが違います。７色のファイアが華々しく立つか、立たないか。色石なら色の美しさ、透明度、大きさがまるで違うでしょう。
ある日、店頭でルースを見ていました。並んでおいてある２つの石はどうみても同等な品質とカラットです。なのに、価格差は３倍にもなっていました。売り子のおばさんに、これどういうことですか？と聞いたところ困ってしまっていました。そこに責任者が現れて、それは私が間違えて仕入れたからです、と。つまり、仕入れ時に読み誤って高く仕入れてしまったので、そのまま利益を上乗せして高く売っているのだと、実に正直に話してくれたことでした。上記の本にも、この事と同様なことが書かれています。何しろ、輸入価格の３０倍で売っている事もあるのです。
追記： ２０１３年９月３０日「未来世紀ジパング」（テレビ東京）に香港でのダイヤモンドオークションの様子が放映されました。
・1.01ct Color:G Clarity:SI2 cut:VG/polish:VG/ Sym.:VG
Size: 6.28-6.31x4.03 mm 37万円
・7.63ct K VS2 G/VG/G
12.98-13.23x7.46 mm 1100万円
・10.16ct G IF VG/G/G
14.13-14.26x8.34mm 3700万円
・ピンクダイヤ ファンシーシェイプ（楕円）
1.02ct Fancy INT IF カスタムカット/VG/G
6.88-5.63x3.76mm 2000万円
