副操縦士の精神障害と経済の不調と

 ジャーマンウィングスの副操縦士が精神疾患を患っていて、故意にA320機を墜落させたと報道されています。これは以前から分かっていたことであり、明らかに会社の落ち度でしょう。この精神疾患なるものが何かは報道されていませんが、「深刻な抑うつ発作」らしいのです。

 なぜ、明らかな会社の落ち度かと言えば、こういう病気は、薬により症状が軽減することはあっても根治治療ではなく、対症療法にすぎないので、根治しないからです。そもそも、脳内には脳が活動するための色々な神経伝達物質が分泌されていてその微妙な調整の上に正常な状態が成り立っているのです。有名なのは、アドレナリンで、これが多く分泌されることにより興奮します。相撲取りが土俵に上ってすぐに相撲をとらず、何度も塩をまいたり、自分で頬を張ったりしているのは戦闘ホルモンであるアドレナリンを出すためでしょう。うつ病セロトニン不足ということになっています。

モノアミン仮説-うつ病の発症メカニズム | utsu.jp 〜うつ病と不安の病気の情報サイト〜

 そのために、セロトニンを脳内で不足させない薬が処方されています。

抗うつ薬-うつ病の薬と役割 | utsu.jp 〜うつ病と不安の病気の情報サイト〜

 が、言うまでもなく、そんな単純な原因ではないでしょう。脳の働きは複雑系を構成し、未知のホルモンも含めて色々な脳内ホルモンの微妙な分泌の形式によって正常を保っているのでしょう。その分泌形式が解明されておらず、せいぜいいくつかのホルモン調整を行う薬だけで治るはずもありません。そんな疾患をもつ人間を人の生命を預かる操縦士として働かせていたということは、明らかな会社人事の過失です。

 ところで、経済も似たような性質をもっています。人間心理を含めた複雑系で、何をどうしたら、どうなるかはまるで解明できていません。1929年の米国の大不況ではケインズ有効需要説に基づいてニューディール政策を発動し、TVAプロジェクトなどを行ってきたのですが、経済状態は良くならず、不況を救ったのは、結局、第二次世界大戦の特需でした。

 FRBが利上げすると、その効果が世界のすみずみまでどのように波及していくのか。それが分かれば苦労はないのですが、まるで分かっていません。経済学がいう事は、素人でも言えること程度なのです。世界経済に関連するあらゆるパラメータを洗い出し、それらの関係を数値化し、一つのパラメータの変異が他に波及していく複雑系ビッグデータ操作プログラムを誰か開発してくれないものでしょうか。確実にノーベル賞ものです。

 NASAのアポロ計画が縮小されrocket scientistと呼ばれた科学者たちが大勢リストラされた時、彼らはウォール街に行き、いわゆるデリバティブと呼ばれる株の派生的金融商品を多数開発しました。株を買う権利を買うなどと訳のわからない商品が今では普通に売買されています。プログラム売買とか、アルゴリズム売買も彼らが開発した株価挙動推測プログラムにより自動的に行われるものです。アルゴリズムとは「目的達成のための手順」であり、それをコンピュータで実行するものがプログラムなので、抽象概念と具体物の違いはあっても同じことです。

 一時は、どの会社も同じプログラムを使ったので、上がる時には全社一斉に買い、下げだすと全社一斉に売るので、暴騰と暴落を繰り返すという愚かな状態を現出したということです。今でも、MX2テレビの解説者が、「このカク、カクと何段も下げているのはアルゴリズム売りですね」などとやっています。

 売買はなんであれ、同じ状況に対して、まだ上がると思う人と、もう下げが来ると思う人の多様性の上になりたっているわけで、買う側も、売る側も自分が儲かると思っているから商売が成り立つのに、一斉に売る、買うでは、「気配」ばかりで一方向に値が動くばかりになります。人間の知性不在で、プログラムに任せきりとは馬鹿げたことをやるものです。人工知能で人間はどうなる?には、この世界では答えは出ていますね。馬鹿げた世界になる、と。