近頃、季節が季節なので暖房機器のコマーシャル、通販番組がテレビによく出てきます。体を陽だまりにようにホカホカ温めますなどの、体に優しい暖かさを売り言葉にしているものが多いのですが、本当でしょうか?ほとんどがキワモノですね。いや、全部かもしれません。
電気で部屋全体を暖める強力なものは現状の普通の家庭用には原理的にないでしょう。家庭の壁についているコンセントは15Aですから、15Ax100v=1500Wでしかありません。こんな程度では8畳とか10畳の普通の部屋全体を20℃~25℃に温めるのは無理です。高気密・高断熱にしても難しいと思います。どれもこれも雰囲気で消費者を騙そうとしているとしか言いようがありません。
先日見ていたコマーシャルでは、これまでのエアコンなどの暖房器は+-3℃で温度制御をしている。従って、温度差が大きい。ところで、この機械は第3のヒータであって、+-0.5℃の範囲で制御するので、温度差が小さいと言っていました。これは、制御方式を言っているだけで、発熱量ではありません。暖かさとは何の関係もありません。そもそも、発熱量が足りなくて室温23℃に設定しておいても、真夏ならともかく5℃を切る真冬に電熱機器では8畳間はそんな高い温度にできないでしょう。例えば、この暖房器で10℃以上にならないとしたら、設定温度23℃の+-何度の範囲でコントロールするなんて関係ないでしょう。何しろ設定温度にならないのですから。自動でスイッチを切ったり入れたりなどの動作は起こらず、ただひたすら入れっぱなしで10℃を保つだけで精いっぱいです。尤も、気温5℃の時に、7℃の室温で良いと言う人には有効かもしれませんが。
エアコンだけは電気→熱エネルギー変換ではなく、ヒートポンプ方式であって外部の熱を汲み上げて室内に運ぶ方法ですので関東以西の海側の温暖地域でかつ室外機の霜取りをうまくやれば、割合強力に温めることができますが、セラミックヒータとかオイルヒータとかは、所詮、電気エネルギーを生で使った発熱方式なので、陽のよく当たる南向きの 4.5畳一間を高断熱仕様で建てればできるかも知れませんが、常識的には不可能問題でしょう。所詮、1500Wの電気エネルギーの総量なので、方式に関わらず、総熱量の計算ができてしまいます。どんなヒータを使おうが、オイルで包もうが、発熱量には関係ありません。我が家のトースタは1300Wですし、ヘアードライヤも1200Wですが、これらで部屋が十分に温まるかどうか考えてみれば分かるでしょう。暖房機器ではなく、採暖機器にすぎません。
ついでながら、壁コンは2口か3口ですが併せて15Aが限度です。トースタとヘアードライヤ、あるいはオイルヒータなどを同時に同じ壁コンで使うと過熱してコンセント回りのプラスチックが焦げたり溶けたりします。ヒータであたたまりながらヘアドライヤーを同じ壁コンで使うのは危険です。
ところで、この記事には何とデロンギのコマーシャルがついています。この説明を読んでみましょう。恐らく上手に発熱量への言及は避けているでしょう。Dysonも付いていますね。
デロンギ:
「乾燥しにくい」 本当でしょうか?
灯油を燃やすとどのくらい結露するか? - dr-yokohamanerのブログ
石油ストーブなら、燃やした灯油以上の水が蒸気として出てきます。乾燥しにくいのですが、電気で水が出てくるなど聞いた事がありません。
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乾燥しにくい理由は「温風を使わない」からだそうです。「温風」が何を想定しているかわかりませんが、常識的にはエアコン暖房ではないでしょうか。発熱方式で考えればヘアードライヤーでもいいのかもしれません。しかし、本来、乾燥の程度を表わす湿度は、室内の温度と水蒸気量で決まるので、「風」など関係ありません。ドライヤーの風を直接顔に当てていれば、顔だけは乾燥するでしょうけどね。暖房と言ってそんなことをする人はいないでしょう。エアコンも、人の居る所を検知してそこに風を送りますなどという馬鹿げたコマーシャルをしているので犯人になりえますが、暖房の観点からは乾燥の度合いは室内湿度がいくつかということであって、風など全く関係ないのです。
次は「”お部屋全体”がムラなく暖かい」という事ですが、「”お部屋全体”が相対的にムラの無い温度」が正しい表現でしょう。もっと言えば「”お部屋全体”がムラなく寒い」が本当の所でしょう。
消費電力(W) | 1500 | 1200 | 500 |
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-- http://oilheater.delonghi.co.jp/product/spec.html
最大消費電力は1500Wなので、トースタと同じ程度の発熱量にすぎません。8畳とか、10畳とかの関東以西の普通の民家の部屋が外気温5℃の時に20℃以上になるとは考えられません。試にトースターかヘアドライヤーをブースターモードで10分位使ってみてください。
「空気を汚さず乾燥しにくい」については、「空気を汚さず」は電気ストーブ一般の性質です。電気エネルギーを熱エネルギーに変換しているのですから、少なくとも使用場所では空気は汚しません。発電所が火力ならそこで汚しています。同じ意味でエアコンも空気を汚しません。
「乾燥しにくい」は上に書きました。室内絶対湿度には無関係です。電気暖房は水はださないからです。「しにくい」ということは、室温も上がらないということでしょうか?室温が上がれば、絶対湿度は同じでも普通の意味で使われる湿度である相対湿度は下がります。むしろ石油系ストーブの方が乾燥させにくいのです。石油は燃えれば水と二酸化炭素になるので、この水で湿度が上がります。エアコン暖房は室内の水分を加えも除きもしないので、絶対湿度には関わらないでしょう。室温を有意に上げるでしょうから、相対湿度は下がり、乾燥します。乾燥させないとは、温度も上がらないの別表現と聞こえますが、このコピーの作者は気が付いていないのでしょうか。
「やけどしにくい」は真実です。
結局、部屋に幼児が居る時の補助暖房として、あるいは寝室で終夜、マイルドに、超マイルドですが、温める用途が向くのであって、寒い冬の主暖房にはなりにくい性格のものです。
どの程度の熱量かは、既に何度も書きましたが、1000W~1500W程度のトースタを10分位使ってみれば分かるでしょう。くれぐれも過熱させないように。
Dysonのコマーシャルは、ざっと見た所、特段に間違った判断を誘発しやすいような不公正な表現はしていないように見えました。自分で良く考えれば、自分の用途に合っているかどうか判断できるでしょう。
なお、ファンヒータとは、石油ファンヒータのことです。電気式ファンヒータは普通の電熱線と温度、湿度の観点では同じこと。
温度の上げ下げがマイルド 湿度 温度 暖房器の表面温度
エアコン マイルド 乾燥 上げる 低い
ファンヒータ 普通 普通 上げる 高い
デロンギ 超マイルド ? 多少上げる 低い
エアコンは水分をださず、温度を十分に上げるので室内湿度は下がります。乾燥はその意味です。 なお、エアコンは室外気温が5℃以下になるとなかなか効きません。大抵は、電熱線が室外機に入っていて霜取りをしています。霜がつくと暖房は停止します。最新のモデルでは無停止運転ができるものがあります。氷点下15℃でも暖まると言うことです。
デロンギは水分をださず、温度も十分には上げないので、多少、湿度が下がるかも知れませんが、温度が上がらなければあまり変わらないかも知れません「?」はその意味です。温度が十分に上がらないのでは本末転倒です。
ファンヒータは、燃焼により水分を出しますが、温度も十分にあげるので、湿度はその兼ね合いで決まります。これを標準としてみるという意味で「普通」です。通常、温度の上げが燃焼による水分の補給より大きいでしょうから、乾燥気味みなると思います。
要するに、用途により選択になるでしょう。
子供や高齢者がいれば、エアコンと床暖と加熱式加湿器。超音波加湿器は水の中のミネラルまで吹き出すので、水道水では、一冬で家具が真っ白になる可能性があります。肺の中はどうなっているのでしょう。少し怖いですね。
暖房費用を考えれば、ファンヒータ。ただし、空気の入れ替えと、火傷に注意。加湿器を備えたものが良いでしょう。
その他の電気式ヒータ:補助の採暖機器として。就寝中に火を使うファンヒータは怖いので、これらを補助的に使う、など。