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デザインを盗用されて訴訟を起こせる?

 秋田県横手市の団扇展に出されたロゴが佐野氏に盗用された事件ですが、果たして、このオリジナルの作者は提訴できるのでしょうか。

楢山からこんにちは: 団扇展

 たとえ商標登録していたとしても、経費の面で実際にはなかなか難しいでしょうそれを承知の上で盗用を続けていたとなると本当に悪質ですし、これを良しとして認めているデザイン界は悪魔の巣窟と言って良いでしょう

 弁護士会は、商標訴訟は企業間で起こるものと想定して訴訟の際の弁護士費用の一覧表を作っています。価格表ですね。表と言っても、A4で5mmか1cm位ある冊子になっていますが、今、手元にないので記憶で書いています。それによると、結構な価格になります。

 更に、裁判所に支払う裁判費用も必要です。被告に対して「xx円を支払え」という訴訟になるのですが、裁判所に払う裁判費用もこのxx円の関数になっていて、当然、要求金額が高くなるに従って、高くなっていきます。

 弁護士費用は、弁護士が何かアクションをするごとに発生します。裁判所に事前打ち合わせ(期日と呼びます)に出かけると、正確には忘れましたが、1時間7万円とか・・・これはうろ覚えなので間違っているかも知れませんが、有名ボス弁護士なら取る金額でしょう。そもそも弁護士は単独では、普通、行動しません。弁護士事務所には何人も弁護士が居て、それぞれ役割分担しながら、あるいは会議で英知を出しあいながら複数で一つの仕事をします。裁判所に出される書類には、弁護士の名前がずらりと並び、コケオドシしますので、この事を知らないと被告は事実怯えてしまいます。

 「さむらい」資格、つまり、「xx士」資格は最近では取得の努力に見合わないとされていますが、それでも26歳くらいでイソ弁(既存の法律事務所に雇われる弁護士)になれれば、800万円程度の年収になるようです。イソ弁を数人雇っているようなボス弁護士では2000万円程度。日本では年間1700時間程度の労働時間ですから、1人の人件費だけでも、時給5000円から1万円強でしょうか。その上に、事務所のレンタル料、光熱・通信費など維持費、交通費、秘書、事務員への報酬等を考えれば、弁護士が弁護団として1時間動けば、数万円になるのは容易に理解できます。

 さて、それで、盗用者から幾ら賠償を取れるかが問題ですが、盗用者がこれで幾ら儲けたかを原告が証明しなければなりません。収入は、上記の扇子のデザインでは、あまりもうかっていないと思われる雑誌社と、京都の小さな扇子メーカからです。賠償金額は盗用者がここから幾ら貰っているかに依存します。

 

 当然の事として、盗用者がそれを明かす事はしないでしょう。忘れたとか、領収書は捨てて持っていないとか、明らかに嘘と分かっても言を左右にするのです。裁判所も、民事裁判では単なる仲裁者としてしか機能しないので、証拠の提出命令など面倒なものは出してくれません。雑誌社、扇子メーカもある意味ではデザイン界と仲間内ですので、原告が利害に関わる大企業ならともかく、田舎の一個人の要請など無視して、幾ら支払ったかなど証拠は出してくれないでしょう。裁判所はこれに対しても何もしません。そもそも、民事では嘘など言い放題で、偽証罪を取られることは原則として無いのです。ばれても「思い違いだった」で済んでしまうからです。裁判所を怒らせない限り、偽証罪をとらないのが民事です。

 裁判官はと言えば、自分の担当だけで年に500件も提訴される東京地裁では、まともに裁判などやっていられないので、和解を推奨するでしょう。何しろ、判決を書くとなると大変な労力になりますから。和解なら当事者同士が勝手にやることという立場なので、比較にならない位に楽なのです。民事訴訟とはそういうものです。

 弁護士のアドバイスに従って、5000万円の賠償請求で提訴した場合、弁護士費用も裁判費用も、5000万円ベースの高額費用になります。費用は合計で数百万のオーダにはなるのではないでしょうか。うっかり、提訴してしまい、実際には10万円で和解ということになれば、弁護士の着手金、裁判所への費用は戻ってきませんから、大損害になります。ですから、盗用に対してはほとんどが泣き寝入りになるでしょう。ベルギーのデザイナは賞賛に値します。まさに、勧善懲悪を地で行く行動でした。

 提訴できないことを知った上で高を括り、盗用を続けているというのなら、実に悪質なのです。こんな事も知らない無知蒙昧な人か悪魔が、「もう十分に社会的制裁を受けている」などと、したり顔でTVでコメントしているのは困ったものです。