企業犯罪が絶えないわけ:人材劣化:東芝、VW、旭化成建材、太平物産、日大名誉教授など

 一言で言えば、当事者の「貧すれば鈍す」なのでしょう。

西郷隆盛の遺訓にこんな言葉があります。

南洲翁遺訓
「命ちもいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、仕抹に困るもの也。此の仕抹に困る人ならでは、艱難を共にして国家の大業は成し得られぬなり。」-- wikiより

 東芝の社長が「貧している?」と不思議に思われる人もいるかも知れませんが、相対的な話です。東芝という世界企業の社長になったら、次は日本経団連の会長になりたいという野心が現れます。南洲翁の言葉で言えば、「名も欲しい、官位も欲しい。もっと欲しい」というところでしょう。西田氏はこれだったと報道されています。

 このようなわけで、なんと、西田氏を始め3代にもわたって社長が経済犯罪を犯したわけでしょう。Dr.Yに言わせれば最後の社長の田中氏などは、西田氏の息がかかっていたとはいえ、西田氏に歯向かう事ができる地位にいたわけで、彼がトマス・ベケットのように職務に忠実であり、良心を持っていたならば、東芝を正常に戻すことのできる最後の人でした。しかし、残念ながら、腑抜けでした。

 この犯罪に関与した5人の役員に3億円の損害請求しかしていない東芝に非難が集まっています。オリンパスライブドアでは30億を超える損害請求がなされているのにです。

オリンパス、菊川氏ら新旧経営陣へ最高36億円を賠償請求
オリンパス損失隠し問題について、菊川剛前会長や高山修一社長ら新旧経営陣19人に対し、最高36億1000万円を会社側に支払うよう求める損害賠償請求訴訟を起こした。」

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camera.itmedia.co.jp より引用

 

 この3億円請求のメカニズムは非常に単純です。例によって東芝内部で行われたであろう会議を仮想再現してみましょう

A「元役員への損害賠償はどのようにしましょうか」

B「しないわけには行かないでしょう。幸い、今の所、株主代表訴訟は国内では起きていませんが、ここでほっかむりをしたら、株主が怒ってどうなるか分かりません。大変危険です」

C「しかし、あの人たちを破産に追い込むのはどうもなあ」

D「まずは、支払ができる程度でアドバルーンを上げてはどうでしょう。それで、何事も起きなければ上々ですし、非難の嵐になったら積み増すということで。」

A「まあ、常套手段ですね」

D「そうです。最初、幾ら幾らと小さな数字を出します。同時に、まだ判明していない部分があり、それが判明したら追加請求をする可能性がある、とマスコミ発表するわけです。最初から「積み増す可能性がある」と言っておく所がミソです。そうでないと、世論の非難を受けたので慌てて増やしたと、また非難されますからね。」

B「それで、うまくいきますか?」

C「論理に矛盾はないので、マスコミや世論が煩ければ、『当初、発表の通り追加分が判明しました』で良いのじゃありませんか。」

D「それでは、その線で賠償請求額を計算してみます」

 ということで、あの発表になったのでしょう。5人で3億円など何とでもなります。

 ところで、ライブドアの堀江氏は懲役になりましたが、なぜ、東芝社長たちは検察に起訴されないのでしょう。これも不思議でしょう。

ライブドアの2004年9月期年度の決算報告として提出された有価証券報告書に虚偽の内容を掲載したとする疑いが持たれるなど証券取引法等に違反したとされる2つの罪で、法人としてのライブドアライブドアマーケティングおよび同社の当時の取締役らが起訴された事件である。
   ・・・
裁判は、堀江貴文に懲役2年6ヶ月、宮内亮治に懲役1年2ヶ月、岡本文人に懲役1年6ヶ月執行猶予3年、熊谷史人に懲役1年執行猶予3年、中村長也に懲役1年6ヶ月執行猶予3年、公認会計士2人に懲役1年執行猶予4年、ライブドアに罰金2億8千万円、ライブドアマーケティングに罰金4000万円と計7人と2法人に対して有罪が確定している。」

-- wikiより引用

 簡単に言えば、日本は誰が牛耳っているかという事に尽きます。日本は民主国家ということになっていますが、100%そうかという問題です。

 元々、最近まで徳川家という一私人の家族が関ヶ原の戦いに勝って以来日本を自由にしてきました。その後明治維新という革命がおこり、薩摩と長州が明治政府を牛耳りました。ところが革命の立役者であった西郷隆盛は下野し政府に対し西南戦争を起こし敗北して自刃。残る政府側の大久保利通は暗殺にあい、薩摩の大物は居なくなりました。長州には高杉晋作という南洲遺訓にあるような大物がいたのですが、維新直前に結核で死に、生き延びた連中は小物ばかり。

 この薩摩の二大巨頭死後、小物たちが日本を牛耳り、太平洋戦争で敗戦。その後も、明治維新の名残の中で日本は生きているわけです。戦前の日本を牛耳っていた軍部は別として財界は、財閥でしょう。三井、三菱、住友、安田。第二次世界大戦で敗北して財閥解体がなされたとは言え、相変わらず、その命脈は続いています。

 東芝三井財閥系なのです。そんな企業の社長3人を起訴するには検察と言えども秋霜烈日の理想とは異なり、気が引け、遠慮しているのではないでしょうか。もっと言えば、3人という個人はどのみちサラリーマン社長なので、検察にはどうでも良いことなのですが、東芝という三井財閥系の大組織に属する、言ってみれば国策企業を汚すのに気が引けているのでしょう。気だけではなく、腰が引けているのかも知れません。へっぴり腰と言うやつです

 

 パナソニックソニーが潰れても我々の生活にさほど影響はありませんが、東芝が潰れると、日本を形成している社会インフラが機能しなくなり大事になります。明治以来の近代国家はこのような財閥の力で建設されてきたからです。中国などのヤクザ国家から日本を守る防衛インフラもそうです。どこが作っているか?財閥系の製造業です。尤も、JALと同じで潰れる前に再生させて、一般人には何事も起きなかったかのように政府はするでしょうけれど。

 VWも恐らく同じ構造でしょう。旭化成建材の杭打ち偽装、太平物産の有機肥料偽装も、地位や金を失うのが嫌だということから起きたのでしょう。

 今朝の読売の編集手帳にこんな記事がありました。

  穂積陳重の言葉;「学者の眼中、学理あって利害なし。区々たる地位、片々たる財産、学理の前には何するものぞ」岩波文庫「法窓夜話」)

 日大の山岡永知(ながとも)名誉教授が暴力団幹部から金を借りていた。テレビ報道では「暴力団といっても、悪いことばかりじゃない」と言い放っているとのこと。こういう知恵おくれの輩が三流大学とはいえ大学の名誉教授で、東京都の都民のためのコンサルタントになっている日本はものすごい人材劣化が起きていますね。

 Dr.Yはこの穂積先生の言葉を信奉していますが、それでも「貧すれば鈍す」となる事を恐れて、かつ、山口判事のような根性もない事を恐れて、誰に頭を下げる必要のない株式投資をしているわけです。何に媚びることなく正義を貫くには無欲であることと同時に生活の安定が必要なのです。しかし、それにしても、上記に関わった人々は不惑の年齢を越えてもなお野心と脂でギラギラのなのですね。感心します。

 山口判事


山口 良忠(やまぐち よしただ、1913年11月16日 - 1947年10月11日)とは、日本の裁判官。佐賀県出身。太平洋戦争の終戦後の食糧難の時代に、闇市の闇米を拒否して食糧管理法に沿った配給食糧のみを食べ続け、栄養失調で餓死した事で知られる。
wikiより