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人工知能は人間を超えられるか その4: パナソニックの首掛け型小型翻訳器

 昨夜のニュースで面白いものを紹介していました。


パナソニック 小型翻訳機など最新技術公開
日本テレビ系(NNN) 2月10日(火)22時29分配信
 東京オリンピックパラリンピックが開かれる2020年に向けた最新の技術が公開された。

 10日、パナソニックが発表したのは、2020年に向けて開発中の最新の技術やサービス。多くの外国人が日本に来ることを想定し、空港やホテルなどで日本の技術で「おもてなし」することを提案している。」
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20150210-00000068-nnn-bus_all

 これで簡単な会話なら英語を習う必要がないので嬉しいというようなコメントがありましたが、簡単な会話程度なら勉強すれば良いのです。

 この小型翻訳ーー大きさも性能的にも翻訳だと思いますーーは、言ってみれば、旅行用の六か国語対訳会話集のようなものです。多少の文法解析をしてはいるでしょう。しかし、それでは翻訳能力は高が知れています。なぜかと言えば、「意味」を知らないからです。自分の訳している内容を理解できていないのです。「意味」の説明は面倒なので止めておきますが、普通の翻訳者が下記の文を翻訳せよと言われれば、まず無理でしょう。バイリンガルと思われるベッキーにお願いしてもムリ、ムリと断られるのは目に見えています。

  「ゲーデル不完全性定理: 自然数論を含む帰納的公理化可能な理論が、ω無矛盾であれば、証明も反証もできない命題が存在する」

人工知能とは? - dr-yokohamanerのブログ

 なぜ無理なのか?意味が分からないからです。そんなもの辞書をみればできるでしょと考えるかも知れませんね。では「帰納的」を辞書で見てみましょう。


帰納的な
【形】

・・・
inductive
posteriori
recursive

英語学習・TOEIC対策・英辞郎 on the WEB | アルク

 意味がわかっていなければ、この3つのうちのどれが正しい訳なのかは分かりません。まるで違います。今の場合、recursiveが正しいのですが、英米人でも普通の人にはこの意味は分からないと思います。解法が存在するという意味です。

 自動翻訳の黎明期には面白い逸話がありました。

The spirit is willing but the flesh is weak.

( 心は燃えても、肉体は弱い。◆聖書の言葉。 --上記アルクの[willing」の項より)

をコンピュータでロシア語に翻訳し、もう一度英語に翻訳した所、次のようになったとか:

 The wine is agreeable, but the meat has spoiled.

(ワインはうまいが、肉はまずい)

  意味がわからないと多義語の場合、どの訳を選択すべきかわからないのです。

 という訳で、コンピュータの翻訳ソフトにとってはすべての単語が実世界レベルでの知識ではなく、辞書レベルの知識でしか与えられないので、普通の人々が上記のような意味不明の文章を翻訳する立場と同じ立場になるわけです。

 もっと言えば、「おおきな蟻」と「小さな象」のどちらが大きいか?は現実世界の知識がないとわかりません。字義上の翻訳は偶々できても意味はわかっていません。そもそも翻訳ソフトは、象も蟻も知りませんし。じゃ、教えれば?どうやって?前に人工知能が人間を超えるには五感が必要だと書きました。五感はセンサーによって比較的簡単に実現できますが、そこから得られる知識をどのように統合して自己学習し、自分の使える知識として取り込むか?これが、いまだにできていません。厄介なものです。

 パナソニックの偉さは、音声認識、翻訳ソフト、音声合成、参照機能(酒という単語があれば、酒の画像、ホームページなどを表示する)などを統合したシステムにした事でしょう。予算的な意味でも、ビジネス的な意味でも、なかなかできることではありません。よくやってくれました。