英語: Induction Heating IH調理器は、日本語では「電磁」調理器となりますが、inductionのどこに電磁ってあるんでしょうね。無いですよ。
electromagnetic inductionを勝手に省略したのですからね。勝手にとはinductionと言えばelectromagnetic inductionの事だと言う約束なんてないということです。electro とはelectricーー電気ーーの意味の接頭辞です。hydroとかmagnetoとか、色々あります。magneticは磁気。electromagneticは 電磁 です。電気と磁気に関わるという意味。inductionは誘導。併せて、電磁誘導。heatingは熱する事。まあ、電磁誘導加熱 とでも言いましょうか。
問題は、電磁誘導ですね。実は電気と磁気って深い関係があるのです。発電機は電磁誘導で電気を起こす機械です。つまり、IHとは、電磁誘導によって鍋そのもので発電し、鍋の電気抵抗で発熱させるということです。
超簡単に説明しましょう。
1 磁石があると、その回りに磁気の場ができます。磁場と言いますーー磁界とも言います。紙の下にI形の磁石を置き、紙の上に砂鉄をぱらぱらと撒くと砂鉄が磁場の形に模様を作ります。小学校でやりましたね。磁場の中で釘のような金属を左右に振るとその釘の中に電気が流れます。この現象を電磁誘導と言うのです。簡単でしょ。これだけの事です。電磁誘導は、これで良いですね?なぜ、振ると電気が流れるのかは分かっていません。それが宇宙の法則なのです。
2 さて、電気が流れて、流れる媒体ーー上の場合、釘ですがーーに電気抵抗があると、抵抗なので摩擦熱みたいな熱がでます。つまり、heatingです。電気製品の全てはこの電気抵抗で熱をだします。ヘアードライヤー、トースター、電球。。。ついでながら電気抵抗が0の媒体もありまして、その現象を超電導と言います。リニアモーターに実用されています。
https://blog.ieagent.jp/hitorigurashi/denkikonro-tigai-221588 より
3 IHとは、これだけの事です。上では、媒体を釘にしましたが、金属の板でも同じことです。磁石の近くで金属板を動かせば板の中に小さな渦状の電流が幾つも流れます。渦電流と呼びます。この電流と電気抵抗で熱が出るのです。IHです。
https://hegtel.com/uzudenriu.html より
4 ところで、この方式ですと、鍋を振っていないといけません。それは不便です。動きという物は相対的です。鍋を振らずに磁場を振ってやっても同じことです。磁場は磁石が作ります。永久磁石ですと、機械的に動かしてやらなければなりません。でも、電磁石、それも交流なら磁場が動きます。だから、交流電磁石を使うのです。磁場も正弦波で揺れるので、その上に乗っている鍋に電磁誘導で渦電流が沢山流れ、鍋の材質による電気抵抗で熱が鍋自身に発生します。ですから、電気抵抗の小さな銅の鍋は使えないなどの制限があるのです。
工夫して各種のメタルで使えるようにしたIHもあります。
5 ああ、鍋に触っても感電はしません。渦電流は鍋の中に閉じていますし、人間の抵抗は鍋の抵抗より遥かに大きいので電気は人間の体に入らないのです。
6 IH炊飯器 大昔、光伸社が開発し、今は亡き東芝の家電部門(中国の美的集団に「東芝」のブランド使用権とともに売却)が製品化した電気炊飯器は、外鍋と内鍋があって、外鍋には水を入れなければなりませんでした。ご飯は、「初めチョロチョロ、中パッパ、赤子泣いても蓋取るな」と言われていました。竈炊きの場合です。外鍋に水が入っていると、蒸発して無くなるまで100℃を超えません。多分、この工夫で初めチョロチョロを実現したのでしょう。水が無くなれば気化熱が要らなくなり温度が上がります。つまり、中パッパです。
7 時が経ち、マイクロコンピュータが安い時代が来ました。Z80など30円。コンピュータは万能機械です。温度センサーと組にして自在に温度制御できるようになりました。マイコン炊飯器と呼ばれます。熱源は変わりません。トースターなどと同じ電熱線です。それをガスコンロのように鍋の下に敷いたわけです。
8 更に時が経ち、古くから分かっていた電磁誘導と渦電流でheatingが実現しました。鍋自体が熱せられますので、直火炊きになります。電気コンロで炊くより鍋が直接に熱せられますので、鍋全体がムラなく、しかも底から側面を包み込むように熱することができるようになりました。メーカーは、だからより美味しくご飯が炊けるといいます。本当でしょうか?
IH炊飯器でなくても下のような構造のものがあります。
9 マイコン炊飯器の歴史は古く、炊飯に関するあらゆる技術の粋が投入されています。マイコン炊飯器で炊きムラがあったなど聞いた事がありません。そんなレベルでは製品化されるわけがありません。中国じゃあるまいし。この世に初めて出た炊飯器だって、そんなことはありませんでした。ProjectXでもやっていましたね。
10 鍋の底からだけ熱が来ると不味いのでしょうか?竈だって、ガスだって下からだけで十分美味しく炊けていました。尤も、今のマイコン炊飯器でも、横にもヒーターを置いた物があります。上の図。
11 IH炊飯器の長所として、販売員がマニュアルを口移しで喋っていることはほぼ根拠がないのです。まあ、定性的には間違いではないのですが、定量的評価がなされていないでしょ。科学じゃなく、風評に近いですね。100点満点の90点以上で十二分に美味しいとしましょう。マイコン炊飯器が98点なら、IH炊飯器は98.2点かもしれません。差が解らない無意味な点数ですね。
12 Dr.Yも圧力IH炊飯器を買ったのでした。圧力釜なら、少しは早く炊けるかと期待したのですが、全然そんなことはありませんでした。無駄金をはらっただけの気がします。
1.15気圧、104℃ ですか。
水がある限り、水蒸気という気体になる気化熱で温度は一定の所から上がりません。純水、1気圧なら100℃です。気圧が高く、水に米から溶け出した不純物があるので沸点は多少上がります。104℃なんですね。幾ら高熱源で熱を入れても水が無くなるのが早くなるだけで、温度はあがりません。ムラができるだけでしょう。
1' 釘は勿論、上下に振っても、回しても同じこと。動けば、金属の中の自由電子が動く=電気が流れるのです。この釘の両端に電線を付けて、数百km離れた家まで電気を送っているのが電力会社です。左右に動かすような往復運動は面倒なので回転運動にします。釘では小さいので何回もグルグルと巻いたコイルにします。これを蒸気タービンで動かせば火力発電機か原子力発電機でしょう。
4' ですから、IHヒーターって、電磁石が入っているだけです。それだけですと、とんでもないローテクです。原理はそんなものです。ですが、効率よく熱を出す色々な工夫が必要で、やっと最近になって実用化できたのです。交流って表皮効果というものがあって、電線の表面にしか電流が流れないので大電流を電磁石に流すと鍋が熱くなるより電線が熱くなってしまったり。。。交流の電気コードって細い線が何十本も入っていますね。あれは電線をしなやかにするだけでなく、表皮効果で電線で熱を出し、電気を無駄にすることから防いでもいるのです。太い1本だとその表面だけ。細くして多くの線にすれば表面が増えます。
ついでながら長い電線は巻いてはいけません。熱が籠もって火事になるかも。特に、最近は200vになっているので、電力=熱は、
電圧の自乗/抵抗
で発生します。抵抗が同じなら100vの4倍発生します!
6' 「電気釜の開発と自動化の開発が混同されたり、電気釜の開発と電気釜の製品化が混同されるなど、「東芝が電気釜を開発した」という誤解も世間では広がっているが、これは正しくない。東芝は電気釜の開発過程では、光伸社に協力はしたが、主導したわけではない。」