電気で熱を出す機器の効率:電気ヒータ、電子レンジ、IHヒータ、コンロと炊飯器

ニクロム線のような電気ヒータは、電圧 x 電流 の電気エネルギーを熱エネルギーに変えています。以前の記事のエアコンは電気エネルギーでモータを回し、ヒートポンプ機能で回りの空気から熱を取り出しています。単純計算で、同じ電気エネルギーで、電気ヒータの5倍ほどの熱が取得できます。

 

所で、電気ヒータ以外の熱を出す機器は、他に、IHヒータと電子レンジがあります。これらの効率はどうでしょう。

 

電子レンジ

 

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電子レンジを調べると、横に貼り付けてある諸元:

 消費電力    1260w

 定格高周波出力 700w

 

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 入力の消費電力と、出力の高周波出力が記載されています

 発生する熱量は、温める食物依存なので不明です。

 

電気ヒータなど旧来の機器は熱する対象に無関係に熱をだしますが、電子レンジやIHヒータは、対象の中で熱が出るので何を計算しているのか良く考えないといけません。電子レンジは、熱する対象そのものが発熱。IHヒータは対象の鍋が発熱し、更にその中の最終目的物を熱します。複雑です。理論計算など出来ず、入れたエネルギーと最終物が受けた熱量を実測するより他ありません。以下の値は、あくまで目安です。

 

1260wの電力を入れると、700wの高周波出力が得られると言うことです。この段階で、効率:700/1260 = 0.55

これは機器の仕様としての効率です。

この高周波で最終的な物体=飲食物にどれだけの熱がでるかは、その物体の性質によるので計算などできません。さつまいもを蒸すのと、水を沸かすのでは効率が違うのではないでしょうか。水分子の摩擦熱ですので。

 

電子レンジは、マグネトロンという、東芝が、多分、一手製造していた真空管で高周波を出し、それで水分子を回転させ分子同士の摩擦熱で熱するというものです。高周波が熱したいものにのみ吸収されれば、0.55という効率で温まるでしょう。多少の損失はあるでしょうが、理論計算できるものではないので、0.5ということで。ガスコンロで炎が出す熱が鍋の横からどんどん逃げていくのを計算するのは無理です。同じことです。

 

ちょっとした物を短時間で熱するには便利ですが電気代は電気コンロと同じ程度。なにしろ、1260w、12.6アンペアも突っ込むのですから早いのは当然。エアコンみたいな電力です。IHコンロに比べたら、倍近くの電気代が掛かるようです。

 

ガスコンロとか、電気コンロは鍋に吸収される熱と逃げてしまう熱が同じ程度らしく、0.5の効率しかないようです。これは、機器の効率ではなく使用環境による効率ですね。電子レンジの機器仕様の効率とは違いますが、使用上の効率ということで考えます。

 使用効率

 電子レンジ ≒ 電気コンロ ≒ 0.5

 同じ0.5でも原因は違います。電子レンジは、機器の効率。電気コンロは使用上の効率。

 

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イズミ IZUMI IEC-105 [電気コンロ オレンジ 食卓料理長]

電気コンロは圧倒的に価格が安いのがメリット。何時間も使うので無ければ電気代の差も十円のオーダなので気にする事はないでしょう。600wで朝、夕、1時間使っても十数円の電気代ですから。

 

dr-yokohamaner.hatenablog.com

 

同じ電気ヒータでも、ポットとか炊飯器は閉空間で発熱しているので熱が逃げにくく電気コンロより、ひいては電子レンジより良い効率でしょうね。つまり、電気→高周波変換のロスがある電子レンジより安上がりの電気代。全く逃げなければ、効率は1.0。電気代は半値に近い。まあ、少しは逃げます。熱が逃げにくいIHが0.9ということ。同じレベルでしょう。

 

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タイガー魔法瓶 マイコン 電気ポット PDR-G220(WU)

 

蛇足ですが、電気にしろガス、石油にせよ、暖房に使う場合、出た熱は、全部部屋に逃げることが目的なわけで、その意味では、効率1.0、100%です。

 

IHヒータ

IHは、電磁誘導でーーつまり発電機と同じ原理でーー鍋の金属内に電気を起こし、その電気エネルギーを熱エネルギーに変えているわけで、電気ヒータと同じ原理です。IHヒータに入れた電気エネルギーが、電磁誘導で鍋に移り鍋でどれだけの電力になるかが、第一段の効率。これは、電子レンジのような機器の仕様上の効率でもありません。電気→高周波↣摩擦熱とは違い、電気↣電磁誘導による電気エネルギー=熱エネルギー の変換効率。

 

電磁誘導による電気エネルギーの発生は鍋に依存するので機器としては、これこれの熱が出るとは仕様に書けないのです。設計上入れられる電力が書けるだけで、出る熱量は使用者側の問題。「↣」は、使用者側の使用条件で決まる事を、メーカの問題ではない事を示します。Dr.Yの勝手な記法です。

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 これは日立製品。 この3.0kwの意味がわかりません。

電磁誘導による消費電力は、鍋で起きる発熱による、鍋での消費電力と、コンロ側に入れた電力が鍋側へどれだけ移るかの効率で決まるので鍋が決まらなければコンロの消費電力は決まらないという性質があるからです。最も、コンロに入れた電力は、高効率で鍋に移るのはトランスなどで既知のこと。ほぼ出力電力と思ってよいのでしょう。

 

実測値が出ているホームページがありました。

 

IH調理について | よくあるご質問 | IHクッキングヒーター | システムキッチン | Panasonic

 「

200V IHの場合の火力「7」は2kW相当で、ガスコンロのハイカロリー大バーナー(※1)と同じくらいの火力(※2)があります。それを上回る火力の「8」「9」の設定もあって、3kWに相当する火力の「9」なら、1Lの水が約2分強(※3)で沸かせます。もちろん、炒め物も充分な火力でシャキッと調理することができます。
※1 4.65kW=4,000kcal/h
※2 当社実測値。通常のIH加熱で鉄・ステンレスを加熱した場合
※3 水温20℃の水1Lを90℃にするまでの時間。

3kwは、「当社実測値。鉄・ステンレス」鍋ででる熱量ですね。

図中には「消費電力(目安)」と記載されています。

 

 

次に、鍋で起きた熱がどれだけ熱するべき材料に伝わるかが第二段の効率。第一段は、電磁誘導が絡むだけに、つまり発電効率が1より小さいだけに、直接に熱を出すニクロム線のような電気ヒータより悪いでしょう。所が、第二段は、出た熱の多くが周囲に逃げるコンロより、直に鍋が熱くなるだけ効率が良いでしょうーー尤も、IHでも鍋の外側から熱が逃げるので、ここに関しては、直接に対象に届く電子レンジよりは悪いのではないでしょうか。IHの効率は0.9だそうですが、これは、第一段の実測の平均効率でしょう。第二段の効率は、まあ、「良い」としか言えませんね。従って、0.9より落ちるとだけ言っておきす。これは電子レンジでも同じ問題でした。

 

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 IH圧力炊飯器の表示 入力電力のみ

 炊飯器ですから釜もメーカのものなので発生熱量は実測して記載可能ですが書かれていません。

 

 結局、ざっとしか言えません。

 IHヒータ ≒ 閉空間電気ヒータ(0.9) > 電子レンジ ≒ 電気コンロ ( 0.5)

 という所でしょうか。

 

 ちょっと意外な電子レンジ。早く温まるのは、熱が外側からかけられ、ジワーと内部に伝わるのではなく、内部も外も同時に一様に全体において摩擦熱で熱くなるからです。それと、使う電力が半端じゃなく大きい。効率は悪いので電気代は高く付くのですが、「同時に、一様に全体で」発熱するので短時間で熱くなり熱が逃げないという点は効率が良いし、延々と長時間使うものでもないので総計の電気代は、それほどでもないのでしょう。

 

炊飯器

マイコン炊飯器とIH炊飯器のどちらが良いかも以上の議論で分かります。電気ヒータを使うマイコン炊飯器も、IH炊飯器も原理は電気ヒータに過ぎません。ここは、入力電力を電磁誘導で内鍋に伝えると必ずロスが起きるIHより、電力が直に熱に変わり電気ロスのないマイコン炊飯器の勝ち。

 

次は、鍋そのものが発熱するIHは、電熱線の熱を鍋に伝える段階で、熱のロスが起きるマイコン炊飯器より有利です。しかしながら、普通の電気ヒータと異なりマイコン炊飯器は断熱された閉空間で熱をだしますーー外が凄く熱くて触れないわけではないでしょ。つまり、鍋そのものが発熱するのと大して変わらないと考えられます。電磁誘導の電気的ロスと、閉空間での熱のロスとの競争です。ま、実質、同じか、マイコン炊飯器の鼻の差での勝ちではないでしょうか。


実際、圧力IH釜という炊飯器を買った時、大きな期待を抱いてスイッチをいれました。別にマイコン炊飯器より早く炊けた訳でもなく、美味しい訳でもなく大いに期待はずれでした。中に電磁石という金属の塊が入っているので重いだけです。

 

ところで、200vのIHコンロの火力は強烈で、これを使ったら、もうプロパンガスーー況んや、実感ではもっと弱い都市ガスーーには戻れません。

 

 

            適切な用途             効 率

電子レンジ カップ1杯の湯を沸かす。ハンバーガを暖める。  0.5

IHヒータ  1リットル以上の湯を沸かす。長く煮炊きをする。 0.9

電気ポット 1リットル以上の湯を沸かす。          0.9

電気コンロ 30分以内の煮炊き               0.5

 

上記効率は、実測しなければ分からないので、あくまで概算です。

電気単価は同じなので、同じ熱を得るのに、効率が0.5のものは、効率0.9のものの1.8倍の電気料金が掛かります。しかし、1000wで30分使っても、電気料金は14円程度なので、「毎日5時間、10時間など長い時間使い続ける」のでなければ一月使っても大した金額にはなりません。例えば、通常の出力、500wか600wの電子レンジで1分なら、約0.5円です。 (0.6kw x 28円 x  1/60分 ) / 0.5 = 0.56円

 単位や括弧は理解の補助の為。

 

windofweef.jp

 

 

offer.able.co.jp

 

 

selectra.jp

プロパンガス(LPガス)の熱量(カロリー)は24,000Kcal/㎥と、大手都市ガスの熱量(カロリー)11,000Kcal/㎥に比べて約2倍以上あります。

 

都市ガス用のコンロのガス穴はプロパンガス(LPガス)用のコンロ穴よりもガスが多く出るようになっています。そのため、実際の使用ではプロパンガスと都市ガスで差を感じる事はありません。プロパンガスと都市ガスでは火力が大きく違うわけではないんですね。

 

 

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