近所のデパートでジュエリーフェアーを開催していたので、見に行きました。「歪んだピラミッド」時代と大して変わりはありません。この種のフェアーは、業者が何店か寄り集まってデパートの最上階の催事場で開かれています。家人にデパートでは売られていないグレードのダイヤモンドのネックレスとリングを付けさせて、売り子に甘言を弄されないよう武装しておきました。いつぞや、ホテルで開かれた展示会に行った時のこと:
Dr. どれもこれも、品質が悪いですねえ。せめて、カットがVeryGood程度の石はありませんか?これって、どれも光ってないでしょ。
中年女性の店員 ペンダントは胸元に付けるので、近くで見るものじゃないんです。だから、こんな程度でいいんですよ。
Dr. 客としては、もっと良い物が欲しいんですよ。・・・
と言うわけで、愚にもつかない言い訳をするのが、この業界なのです。こういう言い訳をさせないためにも、高品質のもので武装して、見せつけておかないと何を押し付けられるか分かりません。
さて、1カラットのダイヤのネックレスのショーウィンドウに行きました。あるにはあったのですが、グレード記載はありません。1カラットとしか分かりません。付いて来た店員に、グレードを聞くと、ショーウィンドウから出して裏に貼ってあった紙を見せてくれました。カラー:L、クラリティ:I、カット:Good という相当ーーというか、圧倒的にーー悪い品質です。カラーはNからは黄色だぞ~ということを露骨に示す呼称が付いていて「Very Light Yellow」となります。Lってその直前です。クラリティの「I」に至っては、最下級のImperfectあるいは、Included(異物を包含している)の事。Goodって、下駄を履かせた呼称で、「まあまあ」程度の感じ。これでは、あまり虹が出ないし光りませんね。付いていた価格は126万円です。
これをルース(裸石)でいくらか調べようとしましたが、タカラ貴宝や、流通のサイトではH以下の低品位のダイヤは扱っておらず、分かりません。アインインターナショナルでその周辺のものがありました。
http://item.rakuten.co.jp/ainint/10002541/
1.034ct K,I2,GOOD
販売価格129,000円 (税込) 送料込
http://item.rakuten.co.jp/ainint/10002699/
1.076ct K,I2,VERY GOOD
販売価格103,000円 (税込) 送料込
http://item.rakuten.co.jp/ainint/10003428/
1.012ct M,SI1,POOR
販売価格95,500円 (税込) 送料込
こうしてみると、小売価格10万円程度のダイヤモンドにすぎません。
このルースにプラチナか金の枠を付けてペンダントヘッドにしてくれるセミオーダサービスがあって、その費用が1~2万円程度。
http://www.japan-gemstone.com/main/2012/08/post-3135.html
付いていたプラチナ850のベネチアン型40cm、2g程度のチェーンは、2万もしませんから(定価は4~5万円と表示)、ルースに鑑定書を付けてもらっても〆て13万円もあれば買えてしまいます。それが、126万円ですから、市場価格の10倍程度に値付けしてあるのです。
ついでに、このダイヤモンドルースの買取価格をデータで推定してみますと、
1.062ct L I1 GOOD 57,000円 2011.02.03
1.005ct L I1 GOOD 22,000円 2011.02.03
http://diamond.gem-market.jp/market/
と、こんなものです。126万円が、ルース(カット済の裸石)で、2万円強~6万円程度。あとはチェーンと台座のプラチナ下取り代が出る程度でしょう。1000万円のダイヤモンドが換金したら50万円という話は、現在でも通用するようです。
サブグレードが書いてなかったのでわかりませんが、もし、I2ならもっと低い価格になります。宝石が財産にならない理由は明白ですね。
さて、気を取り直して、階下におりて常設の宝飾フロアーに行ってみました。30%引きのビラがあちこちに貼ってあります。その中でも特別品の所では、
1カラット、G、SI、VeryGood 160万のところ、55万円
2カラット、G、I、Good 280万のところ、88万円
なんと、1/3程度になってしまっています。これらのダイヤモンドのバーゲン前の上記価格が、デパートとしては、普通のもので催事場の価格体系と類似していることは理解できるでしょう。
(追加データ:2ct N SI 3Ex 160万円 同じデパートの催事場)
それにしても、催事場で「L、I、Good」の粗悪品を126万円で買って、階下に下りてきたら、それより相当良く、1カラットとしては実用上十分に良好なダイヤモンドと言える「G、SI、VeryGood」が55万円で売られていることを知ったら、即、返品でしょうね。この55万円の1カラットはDr.自身はまだまだ買いませんが、詳しくない普通の人なら「買い」で良いでしょう。
しかし、280万円で品質の悪い2カラットを以前に買ったお客はこれを見て、200万円を返せって言わないのでしょうかねえ。試に、ルースの買取価格を調べてみると、
SIはサブグレードが不明なので両方を調べます。
1.039ct G SI1 VERYGOOD 296,000円 2012.11.30
1.029ct G SI2 VERYGOOD 214,000円 2012.12.05
これで、ネックレスに仕立てた売り値が55万円なら良しとしましょう。小売商は零細なので5割の利益が必要なのです。
催事場にあったL、I、Goodの物の買取価格を、参考の為に再掲しますと、
1.062ct L I1 GOOD 57,000円 2011.02.03
1.005ct L I1 GOOD 22,000円 2011.02.03
如何にグレードが低い物か分かると思います。一桁違うのです。ダイヤモンドは怖いですね。デパートの通信販売の1カラット8万円なんて売値は、卸値3~4万円程度でしょうから、もっと酷い品質のダイヤモンドということです。それって、ダイヤなのでしょうか?化学的にはダイヤモンドでも宝飾品とは言えないでしょう。
2カラットものは、
2.307ct G I1 GOOD 575,000円 2011.01.22
http://diamond.gem-market.jp/market/
なので、売値88万円なら、そこそこ良心的値付けでしょう。
ということは、デパート価格は7割引き前には買ってはいけなくて、最低でも市場価格の3倍になっているということでしょうか。言い忘れましたが、宝飾品は基本的にデパート直轄ではなく、テナントですよ。売り子もテナントの派遣でしょう。
この常設の売り場で、ハーフエタニティリングを売っていたのですが、8石のメレダイヤが付いて、恐らく合計0.3カラット程度の重さ。台座はプラチナ。ダイヤモンドのグレードは例によって何も書いてありません。ブリリアンシー(ブライトネス)もシンチレーションも、ディスパーションも希薄なので、L以下、I以下、Fair以下じゃないかと推定しています。0.3カラットというのも、推定です。これで、22万6千円でした。御徒町やネット市場の良心的な店なら3万円程度だと思います。