今日の読売朝刊の「気流」に面白い投稿がありました。典型的な「普通」の人の論理もどきなので、ご紹介しましょう。「返済不要の奨学金早く」というタイトルです。
結論として曰く
「学業に打ち込める環境が必要だ。真摯に学問に専念したい意欲のある学生のため、返済が不要な『給付型奨学金』の創設が求められる」
だそうです。
前提として:
「大学卒業後に非正規雇用などで収入が安定せず、返済に苦しむ若者がすくなくない」からなのだそうです。
おかしいと思いませんか?この前提から、どのようにして上記の結論が出てくるのか? まともに社会人として勤めている人なら、こんな前提と結論が結びつかない議論はしないでしょう。いくらなんでも、周りから袋叩きにされます。たとえば、
「私は真摯に一所懸命に営業してきました。私の実績が上がっていないのは、私の努力を認めず、買わない客が悪いのです。会社は私の精一杯の努力を認めてボーナスをAランクで出すべきです」
時々、良い大人でも、こんな事を言う人はいるようで、「努力で褒められるのは小学生か中学生までだ。大人は実績を出せ」と上司は言っていますね。
「私は真摯に一所懸命勉強してきました。私の成績が上がっていないのは私の努力を認めず、Aをくれない教授が悪いのです。貴社は私の真摯な努力を認めて私を雇用すべきです」
が、認められるでしょうか。実は、東大京大東工大の工学系大学院の修士課程の学生なら素行が悪くなければ認められます。というより、成績など元々不問でしょう。あの東芝でさえ経営建て直し中だというのに930名も採ったのです。日立、三菱、富士通、日電、NTT、三菱重工、パナソニック・・・で何人必要なことか。最近は、Googleとか、Yahooとか外資までいます。この3大学の修士の情報、電子工学専攻の人数はそれぞれ数十人しかいません。日本を代表する超一流の大企業が三顧の礼で出向いてもーー企業が就活で出向くのですね。応募してきてくれるなどど甘い事は言っていられませんーー来てはくれないのです。成績を云々できる立場に企業はないのです。その専攻に籍を置いていることが重要なのです。優秀さの証ですから。そのような学生になるべく勉強することを真摯に学問に専念したというのではないでしょうか。せめて早慶上智を志望する努力をしてもらいたいものです。そのような学生はこんな奨学金は不要でしょう。
そもそも「真摯に学問に打ち込み」優秀な成績を残した学生なら、「頭が良くて理解力があって我慢強くてスキルがある若者」 --http://blogs.bizmakoto.jp/fukuyuki/entry/20969.html
に成長し、いくら不況の世でも引く手数多です。望む所に就職できます。
ところが、この投稿者が挙げている若者は、下記の範疇に入るものです。
「この大量にいる『頭が悪くてワガママで我慢できなくてノースキルな若者』が仕事が無くて、貧困に陥っている場合、どう支援すればいいのでしょうか?
彼らの望む「自分らしさ」「高収入」「やりがい」「将来性」「時間的ゆとり」をすべて満たせて、彼らの能力で遂行できる業務が地球上に存在するのかと思います。」
」 -- http://blogs.bizmakoto.jp/fukuyuki/entry/20969.html
これが真っ当な社会人の意見でしょう。
「大学生として十分な学力を有しない者が授業を受けるようになったこと、目的意識の希薄な者、学習及び研究意欲の低い者、社会に出るのをためらう者、などが大学や大学院に進学し、そこで不適応状態に陥り」
「下流社会」
(下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書) 新書 2005/9/20)
「所得が低いだけではなく、生活能力や働く意欲、学ぶ意欲に欠け、「だらだら歩き、だらだら生きている」ような階層集団が「下流社会」を形成しつつあると論じる。・・・」-- 日経BP企画
給付型奨学金とは何か? - dr-yokohamanerのブログ
どこにも就職できないということは、日本中の会社から、君は何のスキルもなく役に立たないので我が社には要らないとお墨付きを得てしまったわけで、このような若者のどこが、「真摯に学問に専念したい意欲のある学生」なのか、Dr.Yにはどうしても理解できません。
この種の問題の専門家である東大教授は、皆の納得ができる形で検討しなければならないという意味の発言をしています。オブラートに包んだ表現ですが、言っていることは上のサイトの意味です。
こんな無駄な奨学金を創設するより、足りない税を向けなければならない問題が山ほどあります。子供の貧困:パートの母親一人の収入で3人の子供を養わなければならない家庭。老人の貧困:7万の年金で暮らす独居老人、女性の貧困・・・あらゆる世代の貧困があります。これらは現に今、日本の社会を蝕んでいる問題です。
実際の所、18年間学業などと無縁に放埓な暮らしをしてきて、実質的に無試験入試でFランク大学かその程度の所に入り、4年間を無駄に過ごした挙句、企業から君はノースキルなので要らないと言われてしまうであろう学生に奨学金という名目で金をばらまいて将来にむかい新たな問題の火種を作る余裕は日本にはないのですよ。消費税を40%程度にしても果たして解決するかどうか。一代で巨大な富を築いた成金に極端な累進課税を掛けて巻き上げたとしてもそんな方法は持続的な解決になりません。
この投稿を掲載した読売の頭の程度はこんなものなのでしょう。それが一人前のマスメディアの顔をしているところが、恐ろしい。