既に書いたように、風邪やインフルエンザに掛かる原因の一つに冬は湿度が極端に低くなる事が挙げられます。
我が家の場合、エアコン暖房では30%台です。これを50%以上にしなくてはなりません。何台もの加湿器で数百ワットという電熱ヒータの高価な電力を使っても、なかなか50%になってくれません。結露防止サッシを使っているので結露で失われているのでもないのです。エアコン暖房で気温が上がり、延いては相対湿度が下がりカラカラになってしまうのですね。室温24℃ 湿度55%〜60%を目指しています。
というわけで、石油ファンヒーターです。
但し、条件付きです。
運転費(燃費)はエアコンが一番です。問題は通常のエアコンでは1、2月のような寒い日には十分な熱がでないこと。寒冷地仕様で、除霜運転時にも停止しない無停止暖房ができるモデルが家にない場合です。
エアコンは、相対湿度を下げてカラカラに乾燥した空気にします。これを解決する強力な加湿器が使えない場合です。
運転費はエアコンが安いのです。
灯油はC11H24などの化学式をもつ物質の混合物だそうです。地下から古代の植物が腐るか何かしてドロドロの液状になったもの(原油)を吸い上げて精製するだけだから、一つの純粋な炭化水素系の物質じゃないことはわかります。
最も簡単な炭化水素は、メタンと呼ばれるガス。CH4です。
H
Ⅰ
HーCーH
Ⅰ
H
これが長くなると、
H H H H H H H H H H H
Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ
HーCーCーCーCーCーCーCーCーCーCーCーH
Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ
H H H H H H H H H H H
こうなります。
この灯油がなぜ、水になるかと言うと、Cが空気中のOに代わります:
H H H H H H H H H H H
Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ
O O O O O O O O O O O
Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ
H H H H H H H H H H H
あと、両端に残っている2つのHで水分子が一つできます:
HーOーH
つまり、n個のCが酸素に置き換わり、n個の水に代わり、両端にあるHで1個の水、合計 n+1個の水に変わるのですね。
原子量12の炭素は、原子量16の酸素より軽いし、水分子が1個余計にでるので、重量では、燃えた灯油の重量よりかなり重い水になります。
蛇足:
が、C11H24という化学式の物質の構造にはもっと色々なものがあるそうです。
さて、これが燃えた時の計算:
C11H24+17O2→11CO2+12H2O
で、二酸化炭素と水になります。燃えて高温になっているので、水と言っても気体の水、つまり水蒸気になります。
原子量は、C=12、H=1、O=16 です。水素原子の質量を1とした時、炭素は12、酸素は16です。
これで、灯油が燃えたとき、どのくらいの水が出てくるかが簡単に計算できます。
C11H24:12*11+1*24=156
17O2: 17*16*2= 544
11CO2:11*(12+16*2)= 484
12H2O:12(1*2+16)= 216
つまり、156gの灯油が燃えると、216gの水が出てきます。
量で言えば、灯油の比重は0.8なので、156gは、156/0.8=195ml 。
これが燃えて、216mlの水が出てきます。1.1倍です。
凄いですね。燃やした灯油以上の量の水が出てくるのです。勿論、無から有が生じた訳ではなく、空気中の酸素が混じるからです。重量的には灯油が水になったと言うより空気中の酸素が水になったという方が妥当でしょう。
まあ、どのみち、灯油の成分は混合物。その意味で、この計算は精密ではないので、燃やした灯油と同量の水が出ると覚えておけば良いでしょう。
これは、巨大な加湿器なのです。燃やした灯油の容量のほぼ1割増しの水蒸気が出てきます。
とはいえ、こういう問題もあるにはあります。
「
もう!!どうしろって言うの!! アパートの結露がひどくなり、管理会社に電話したところ「石油ファンヒーターとか使ってると結露がひどくなるんですよ」と。
」
「
ファンヒーターが湿気を発生するわけではなくファンヒータで乾燥され余分になった水分が冷たい部分で冷やされて水に戻るのが結露なんです。
」
メチャクチャな事を言っていますね。義務教育の敗北です。中学生でもこのデタラメさには笑いころげるでしょう。
石油は燃えればーー燃えるとは酸化という化学反応ですーー上のように燃えた石油以上の水に変換されます。石油ファンヒーターで「乾燥」などしません。
灯油を燃やすとどのくらい結露するか? - dr-yokohamanerのブログ
一般に気温が上がると、空気が含む事ができる水蒸気の量が増えるので同じ水蒸気量でも、相対湿度が下がりますが、石油は水に変換されるので室内の絶対水蒸気量が増え、温度上昇による相対湿度下降以上に相対湿度が上がります。湿度の説明などあちこちに転がっています。石油ファンヒーターの場合、多くの水を放出するので相対湿度が上がります。1日に5リットルの灯油を燃やせば、バケツで5リットルの水を部屋にばらまいたようなもの。
但し、セラミックヒーターのような電気ファンヒーターなら、何も燃やさず、故に何も出てこず、気温が上がるだけなので相対湿度は下がります。電気代が高いですけど。
「湿度とは何なのでしょうか。水は、日常経験できる温度帯で3つの様相を呈します。氷という固体、水という液体、水蒸気という気体です。湯を沸騰させると、盛んに水蒸気になって空気に溶け込んでいくのが分かります。白く見えているものは気体の水蒸気ではなく、水ですが、それに伴って見えない水蒸気が空気に溶け込み、沸騰させている水が減って行きます。
この空気に溶け込んでいる水蒸気の量を計る単位が湿度です。日常使われる湿度は、「相対」湿度です。空気に溶け込める最大水蒸気量の何%かを示す指標です。これが相対湿度です。なぜ、相対なのか?空気の中に溶け込むことのできる最大水蒸気量は、空気の温度によって変わるからです。高い気温では沢山保持できても、低い気温ではより少なくしか保持できません。空気は温度によって水蒸気を入れるカバンの大きさを変えてしまうのです。
例えば、密閉された8畳間で、明け方温度が低い時、その温度で溶け込める最大水蒸気量は500gとしましょう。そして、実際に空気中に500gの水蒸気が溶け込んでいれば、相対湿度は500/500=100%となります。
昼になり太陽が射すと、温度が上がります。その温度で溶け込める最大水蒸気量は1000gとすれば、上記、密閉された8畳間の空気の中にある水蒸気は500gのままなのですから、相対湿度500/1000=50%ということになります。
つまり、空気中に同じ量の水蒸気(量に変化はないので、絶対量ですね)があっても、温度が上がるか下がるかで湿度は変化するので、相対湿度と呼ばれるのです。
」
蛇足:
Cはどこに行ってしまったのかというと、これも空気中の酸素と化合して大量の二酸化炭素になります。上の式を見てください。156gの灯油が燃えると484gの二酸化炭素がでるのです。水の倍以上です!そして544gの酸素が失われるのです。空気が汚れるとはこの事です。怖いのは、炭酸ガスが発生するだけでなく、大量の酸素が室内から失われること。一つの炭素が2つの酸素を消費しますからね。換気を忘れずに!
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C C C C C C C C C C C
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まとめると、
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HーCーCーCーCーCーCーCーCーCーCーCーH
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空気中の酸素と化合して ⇓
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O O O O O O O O O O O O
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H H H H H H H H H H H H
と
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C C C C C C C C C C C
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石油ファンヒータは、最新の寒冷地仕様のエアコンにランニングコストでは、負けるようです。